中国のテレビも過去のスパイ事件について詳しく報道するなど、習指導部が「国家安全」に対する人民の意識を高め、スパイ行為の防止を徹底させようと神経を尖らせているようにも映る。
ただ、中国が仕掛けるとされるハニー・トラップは、欧米や日本にとっては脅威とみなされている。
英メディアがかつて報じたところでは、英国防省は諜報機関の上級職員向けに、中国のハニー・トラップ対策マニュアルを策定したほどだ。マニュアルは中国のハニー・トラップについて「手法は巧妙かつ長期的。中国人諜報員は食事と酒の有効性を知り尽くしている」とし、「中国の情報に対する貪欲さは広範囲かつ無差別だ」と分析している。
過去には米国でも、米軍の最高レベルの機密情報にアクセスできる立場にあった元陸軍将校が、国際会議で出会った女性と恋愛関係となり、戦略核兵器や弾道ミサイルに関する機密情報を伝えたといい、刑事訴追されたこともある。
こうしたことから、中国が国内向けにハニー・トラップの警戒網を敷くことに「どの口が…」との声も聞こえてきそうだが、ハニー・トラップの威力を熟知した中国だからこその対策といえるのかもしれない。