□スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹
日本の文具市場は、右肩上がりの成長が期待できるとはお世辞にもいえない。メーカー各社の業績や業界規模も拡大の手がかりが見当たらないのが実情だ。
その大きな要因は、少子高齢化による内需縮小やパソコンの普及によって紙や筆記具が使われる機会が少なくなってきたことにある。このような背景のもと、日本の文具メーカーは世界に打って出ることを市場命題として果敢に取り組んでいる。
日本の文具といえば、世界一の品質と使い勝手の良さ、さらにはさまざまなアイデアが盛り込まれた優秀な商品が多いことは周知の事実だ。しかし、品質の良さをいくら訴求しても、現在のアジア新興国、ひいては世界では勝てないということを認識しなければならない。
20年ほど前は、中国メーカーの文具は「安かろう悪かろう」を具現化したような商品ばかりだった。
例えば、ペンは書き始めてしばらくするとインクが漏れ、ホチキスは5枚を留めるのがやっとで5回に1回は留まらない有りさまだった。
一方、日本メーカーの文具なら、ペンのインクが漏れるなど言語道断。ホチキスは20枚でも一気に確実に留めることができた。
それほど品質の差があった20年前と比べて、現在では中国メーカーの間で技術革新が進み、品質がかなり向上している。今後、製造工程の国境を越えた共通化がますます進んでいく文具業界で、日本メーカーが中国メーカーとグローバル競争で勝っていくのは困難だ。