日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉をめぐり、EUが農林水産分野の関税撤廃率に関し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を上回る水準を求めていることが16日、分かった。
今月9日に国会で承認されたTPPは、日本の農林水産物の関税撤廃率は82%。日本側は農林水産省中心に拒んでいるもようだが、年内の大枠合意を目指しており、交渉は緊迫度を増している。
EPA交渉では、日本側は、EU側の乗用車や電子機器の関税の早期撤廃などを要求。一方で、EUは、豚肉やチーズといった農産品に関し、TPPの水準を上回る市場開放を求めている。EUが日本の求めに応じた場合、農産物で譲歩を迫られる可能性が高い。
安倍晋三首相はTPPの国会審議で「TPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があることを国家の意思として示す」と表明。自民党も「TPPと同じ水準なら反対しにくい」(農林族)としており、TPPの水準が交渉の目安となっている。
TPPでは、米国向け乗用車の関税は、現在の2.5%から段階的に引き下げ25年目に撤廃する。日本は欧州に対し現在の10%から早期撤廃を求めている。
豚肉はTPPで、輸入価格が安いほど関税が割高になる日本の「差額関税制度」を維持し、一部の関税は撤廃を回避。チーズもモッツァレラやカマンベールの関税を維持した。これらの品目は欧州産の輸入が増えれば、国内の畜産農家に影響が出るとみられている。
一方で、国内の農家への影響が小さい見込みのパスタは、日本はTPPで合意した水準より関税を引き下げそうだ。
首席交渉官会合で進展があれば、23日ごろをめどに、通商担当のマルムストローム欧州委員と岸田文雄外相による閣僚会合を開く見通しだ。