平成29年の日銀は「ポスト黒田」をめぐる人事構想が話題の中心となりそうだ。日銀の金融政策はこの1年、マイナス金利政策の導入や長期金利0%程度の誘導目標の設定など、いくつもの転換点を通過してきた。長期化が見えてきた「異次元の金融緩和」の行く末を誰の手に委ねるのか-。永田町や霞が関では早くも思惑がうごめきだした。
黒田東彦(はるひこ)総裁の任期は30年4月8日まで。逆算すると、29年後半には、黒田総裁の後任人事をめぐる観測が活発化することが予想される。
気の早い市場関係者の間では、すでに複数の具体名が挙がっている。日銀は低金利環境が長く続くように政策の枠組みを変更したことに加え、2%の物価上昇目標の達成時期を「30年度ごろ」に先延ばしし、異次元緩和を長期戦に持ち込んだ。このため、数いる総裁候補の共通項は「現行の体制や金融政策運営との継続性」(日銀幹部OB)という。
有力候補の1人とされるのが、安倍晋三首相の経済ブレーンで駐スイス大使の本田悦朗氏だ。金融政策の限界が意識された28年夏には、首相に日銀が国債を買って財政資金を提供する「ヘリコプターマネー」政策の導入を進言したことでも話題になった。
12月上旬には、米ダウ・ジョーンズ通信のインタビューに応じ、首相から黒田総裁の後任への要請を受けた場合の対応について「私は地獄にでも行くつもりだ」とちゃかした。