【マネー講座】《株式の魅力》(5)〈今後の市場見通し〉山谷乗り越え年末に向け上昇へ (1/4ページ)

 株式投資は、当たり外れに賭けるものではなく、世の中の動きや変化に乗って業績を上げられる企業を見極め、時間を武器に短期的な山谷を乗り越えれば、長期的に資産形成に役立てていただける魅力のあるものです、とご説明してきました。ただし、株式市場は日々様々な出来事に影響されているのも事実です。今回の連載の最終回に当たり、現状の株式市場を取りまく環境を踏まえながら、2017年末、そして今後の日本の株価動向の考え方を整理します。(野村証券 若生寿一)

株価見通しは「企業の利益が伸びるか」と「割安感があるか」の掛け算

 株価=EPS(一株当たり税引き後利益)×PER(株価収益率)、つまり企業業績と期待感(市場心理)の掛け算、が基本の考え方です。これは言い換えれば、「日本企業の利益が伸びそうか」と「株価に割安感があって上昇余地がありそうか」の掛け算になります。それぞれに分けて考えてみます。

 現状、米国経済は堅調な雇用と消費の好循環を支えに景気回復が続き、失業率がこれ以上下がるとインフレになりかねない、完全雇用状態に近いと言われています。ですから米FRB(連邦準備制度理事会)は金融緩和政策の修正を続ける方針です。また、中国経済も中期的な成長率低下が続く中、インフラ投資などの景気下支え策が行われ、社会不安を招くような景気悪化は避けられています。これらを踏まえて日本経済も、輸出改善に加えて人手不足対応などの設備投資の押し上げで景気回復が続く見通しです。景気回復が続けば、世界全体での日本企業の売り上げは増えるでしょう。

 一方、実際には世界的にインフレ率が加速しないため、結果的にFRBの利上げが緩やかにしか進まないという見方が広がり、円安ドル高の動きが明確になりません。とはいえ、110円/ドル程度の水準であれば平均的な日本の輸出企業は採算が取れるため利益は伸びると見込まれ、主要企業合計の経常利益は今来期と最高益を更新する見通しです。

企業業績を冷静に見極めることが重要