【高論卓説】増える高齢ドライバー事故 免許証、納得できる自主返納に知恵 (2/2ページ)

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 厚生労働省の認知症有病率調査によると、12年時点で65歳以上の高齢者における認知症の有病率は約15%と報告されている。つまり高齢者の約6人に1人が認知症ということになる。さらに、このうち重度の認知症が約36%占めており、高齢者の20人に1人が重度の認知症ということになる。

 高齢者の事故防止策の一つとして運転免許証の自主返納制度が設けられており、身体機能の低下などの理由により運転に不安がある場合には、運転免許証を自主的に返納することを勧めている。返納者のうち希望者には、公的な身分証明書として使用することができる「運転経歴証明書」を発行するとともに、各種の特典を設けて返納を促している。

 実は筆者の義父も86歳に達し、身体的衰えのため免許証の更新をしないことを親族で決めた。ただ、返納による特典は、都市部では比較的充実しているが、老夫婦の住む和歌山県の片田舎では返納しても手続きに手間がかかるだけでメリットがほとんどない。田舎では、自動車を運転できなくなると、「移動弱者」や「買い物難民」となり日常生活に困る事態に陥る。この対策をどうするかは切実な問題である。

 16年には75歳以上の約16万人が免許を返納しており、今後も増えることは間違いない。長期的には自動運転の開発推進やライドシェア(相乗り)の導入など、新技術や新制度による支援も必要だろう。一方で介護保険制度の送迎サービスの一部を免許証返納者も利用できるようにするなど、今ある制度を柔軟に活用していくような取り組みも必要だ。

 ただ高齢ドライバーの事故を減らすには、運転しないことが一番であるのは間違いない。そのためには、自発的な免許返納者をいかに増やすかに、知恵を絞る必要がありそうだ。

【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年から遼寧中旭智業、旭リサーチセンター主幹研究員。59歳。大阪府出身。