【高論卓説】学部譲渡を容認、文科省が新方針 (1/2ページ)

 ■笛吹けど踊らず、危機意識の低さに警鐘

 日本私立学校振興・共済事業団の資料によると、2024年以降、18歳人口は100万人台へと減少する。高等教育機関への進学率は社会状況によって異なるため予想できないが、大学経営は厳しくなることだけは事業団も推考し、各大学に対して策を練るよう喚起する。

 18歳人口が120万人の今年ですら、私大の約4割、私立短大の約7割が入学定員未充足である。それゆえ、赤字経営の私大は3割を超す。現状のままでは多くの私大は生き残れない。

 それで文部科学省は、学校法人の合併、大学の合併を奨励するようになった。だが、各大学には建学の精神があり、母校の消滅に反対する同窓会があって、なかなか合併は難しい。赤字であれば、教職員の給料を下げ、教員の研究費を減額すれば、数年間は維持できたとしても、やがて破綻を招く。

 私は日体大理事長として、いくつかの大学法人に合併を打診している。しかし、当然ながら一筋縄ではいかず、成功しそうな雲行きにない。理事長や学長には定年や任期があり、己の代に大変革をして同窓会からの反逆者なる汚名、烙印(らくいん)を回避するためか、赤字経営が続いていても動こうとはしない。

 一向に進まない大学の合併劇に業を煮やしたのか、文科省は新しい方針を打ち出した。経営効率化や再編を促すために、私大の学部を他大学に譲渡することを容認するという。「学部の切り売り」を認め、大学再編へのステップにしたいと考えているかに映る。具体的な制度化については、11月から中央教育審議会で検討を始めた。

 学校教育法は、学校法人が大学全体を譲渡するケースは規定しているものの、学部だけの譲渡は明記しておらず、現在は認められていないから、文科省の焦りぶりは尋常ではない。笛吹けど踊らず、大学の破綻予想が現実味を帯びる昨今、大学法人への警鐘であると同時に、大学への経常費など補助金の削減の狙いも見え隠れする。

会社経営をほうふつとさせられる「学部の切り売り」