【EPA最終合意】豚肉、チーズ、木材などの関税撤廃・削減、国内農家は戦々恐々、補正予算などで支援策

 日欧EPAでは日本の農産物関税が82%の品目で撤廃される。質が高い欧州産の豚肉やチーズ、木材などが流入して価格競争になる可能性があるため、国内生産者の不安感は強い。政府は平成29年度補正予算案などに農家の赤字補填などの経営安定化策を計上し、懸念を払拭する構えだ。

 「農家個人にできる努力は既に限界にきている」

 豚の飼育頭数日本一の鹿児島県にある「鹿児島きもつき農業協同組合(JA鹿児島きもつき)」の担当者は最終合意に頭を抱えた。

 日欧EPAが発効すれば豚肉の関税が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)並みに引き下げられる。EUから冷凍豚肉など低価格品の流入が増え、豚肉相場全体の引き下げ要因になりそうだ。国内の豚肉農家はブランド化で対抗するが、今度は価格帯が重なる輸入牛肉と競合し、消費が伸び悩む懸念が指摘される。

 国内対策をまとめた政策大綱では、牛・豚肉の生産農家への赤字補填の割合を現行の8割から9割に拡充する。既にTPP対策で導入が決まっていたが、日欧EPAが先に発効した場合も適用することになった。チーズや木材も品質の向上や生産効率を高めるための設備支援などを掲げた。

 大綱では、農業対策の財源について「政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」と明記した。ただ、財務省は関連予算の圧縮を厳しく求めており、政策実現に必要な予算を確保できるかが課題となっている。(高木克聡)