海賊ライブ視聴許さず ディズニーやNBA、シンガポールを批判

 法と秩序の確保を自負するシンガポールが、海賊版コンテンツの違法なライブストリーミング視聴の温床になっているとして、ハリウッドやテレビ業界、スポーツ団体の批判の矢面に立たされている。声を上げたのは、アジア有線・衛星放送協会(CASBAA)傘下の業界団体CAPだ。同団体の加盟各社には、米娯楽メディア大手ウォルト・ディズニーやタイム・ワーナー傘下の米ケーブルテレビ局HBOテレビ、米プロバスケットボール協会(NBA)、サッカーのイングランド・プレミアリーグなどが名を連ねる。

 ◆機器入手は合法

 CAPによれば、シンガポールでは数多くの映画やテレビ番組、スポーツの試合など、承認されていないライブストリーミングサービスも視聴できるセットトップボックス(STB)が合法で手に入れられる。

 ソニー子会社なども含む21のCAP加盟各社は、STBの内部で違法ソフトを排除できるよう政府に対応を求めている。こうした機器は国内の家電販売店や中国の電子商取引(EC)最大手アリババグループ傘下のラザダ・グループなどのウェブサイトで購入できる。

 シンガポールでは薬物・銃器関連の違法行為に死刑など重い刑が科されることで有名だが、一方で同国は知的所有権侵害を取り締まるCAPのキャンペーンで東南アジアの重点戦略地域に位置付けられている。CAPのゼネラルマネジャー、ニール・ゲイン氏は「違法なSTBの入手しやすさでは、シンガポールがアジア太平洋地域でトップだ。この機器を使うことで多くの放送番組やビデオオンデマンド(VOD)などの違法コンテンツが視聴可能になる」と指摘する。

 英デジタルTVリサーチの予測によれば、ネット経由のテレビ番組や映画の知的所有権侵害の世界的な被害額は今年、318億ドル(約3兆5810億円)に達し、2022年には516億ドルに膨らむという。同社によれば、ネット経由の知的所有権侵害による被害は来年、アジア太平洋地域が北米を追い抜き、世界最大規模になるとの見通しだ。

 著作権侵害情報分析サービスMusoによれば、シンガポールは海賊版コンテンツのネット経由の利用者数で第9位に入った。CASBAAがシンガポール国民1000人を対象に実施した調査によれば、約4割が違法コンテンツを利用していると回答した。

 シンガポール政府はSTB自体に違法性はないとみている。グーグル傘下の動画共有サイト、ユーチューブをはじめとする合法的なコンテンツの視聴にも利用できるためだ。

 シンガポール知的財産庁(IPOS)は「著作権侵害問題では機器や技術そのものの不正というよりも、その用途の違法性が問われる。このためこうした機器の利用者は合法なプロバイダーのコンテンツを確実に利用する必要がある」と説明した。

 ◆政府は対応表明

 大統領府近くにあるシンガポールの電気街「シムリム・スクエア」では15以上の店舗で最低価格100シンガポールドル(約8350円)程度でSTBが販売されている。多くの店ではシンガポール国内では通常見られないコンテンツがストリーミングで見られると宣伝している。

 ケン・リーさんの店では週末には平均10~20台のSTBが売れる。主要な家電市では1日300台近く売り上げることもあると話す。リーさんは、STBの使用に違法性はないと顧客に説明しているという。「STBはプログラムのコピーをダウンロードしているわけではないので、著作権侵害には当たらない」と話している。

 CASBAAのメデイロス最高政策責任者は、STBの合法的な利用をめぐり曖昧な部分をなくし、違法コンテンツを提供する企業に対する法的措置が講じやすくなるようシンガポール政府に働き掛けていくと話す。

 シンガポール知財庁は「業界と協力してSTBに関わる懸念に引き続き対処する」と表明した。

 CASBAAはまた、シンガポール政府に違法コンテンツの国内流入を阻止することも求めている。同国は昨年、違法ダウンロードを提供したウェブサイト1社を取り締まった。

 シャンムガム内相兼法相は今年8月、シンガポールには「強力な知的所有権保護体制がある」と言明した。この翌月には世界経済フォーラム(WEF)が知的所有権保護で同国を137カ国中4位に位置付けた。

 NBAの幹部、アヤラ・ドイチュ氏は「新たに発足したCAPは、正当な権利および利益を保護するためのNBAやそのパートナーによる取り組みの力になる」と期待感を示した。(ブルームバーグ Bruce Einhorn、Krystal Chia)