「中央」の指示を絶対視 子供の凍傷も起きた中国“ストーブ撤去”の背景 (3/5ページ)

 第2は、産業競争力の強化や国民の生活水準向上など、必要な分野においては、政策支援を続けることである。

 例えば、2017年9月30日、中国人民銀行は、中小零細企業や農業、貧困世帯などへの貸し出しを増やしている金融機関に対して、預金準備率を引き下げると発表した。金融政策では総じて引き締めスタンスを強めているが、消費の底上げや産業競争力の強化に役立つ分野に限っては、緩和スタンスを続けているといえる。

 さらに、12月1日より、乳幼児用おむつや洗浄便座など187品目の輸入関税が引き下げられた。今回引き下げ対象となった商品の多くは、消費者のニーズに国産品が十分対応しきれず、海外旅行時のお土産として「爆買い」されているものである。こうした現状を踏まえ、輸入コストを下げて、国内で商品を買いやすくする狙いがうかがえる。

 また、民間の固定資産投資は総じて抑制方向にあるものの、インフラについては着実に整備する方針である。道路や鉄道などに加え、情報および物流網の整備・強化が党大会の「政治報告」でも盛り込まれている。新規プロジェクトの承認等を通じて、インフラ投資が大幅に落ち込まないよう措置も講じられている。そのほか、企業向け税・社会保障負担の軽減のように、競争力強化を意図した取り組みも続いている。

 第3に、政府の基本姿勢として、成長重視の姿勢を維持していることである。過度な引き締め策を実行し、改革を拙速に進めれば、経済は失速し、中国社会が大混乱に陥りかねない。習近平政権としても、そうしたリスクを冒してまで、引き締めを強化し、改革を進める意向はないであろう。改革の推進はあくまで安定成長が前提である。

 とりわけ、「小康社会」(いくらかゆとりのある状態の社会)を2020年までに実現し、結党100周年に当たる2021年を祝賀ムードで迎えることは、共産党指導部にとって 至上命令である。その「小康社会」の主要目標の一つが、2020年の実質GDPを2010年の2倍の規模に増やすというものである。

中国政府が許容できる成長率下限は6%台の前半