東京円急伸、一時106円台 リスク回避で円買い 日本企業に悪影響も

 14日の円相場は対ドルで一時、約1年3カ月ぶりの高値をつけた。1月にみられたユーロ高を起点とする「ドル安」から、最近は米国発の株式市場の動揺を受けた投資家の不安心理増大に伴う「円高」の色彩が強い。2016年11月の米大統領選でトランプ氏が勝利した直後の水準まで逆戻りした形だ。足元の円高傾向が長引けば、好調を維持している日本企業の業績にも悪影響が生じかねない。

 「1月は『ドル売り』の雰囲気だったが、今月に入ってからは『円買い』の展開だ」。みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストはこう指摘する。

 1月は欧州中央銀行(ECB)が予想より早く金融緩和策の縮小に動くとの観測からユーロ高ドル安が加速し、これが円高ドル安に波及した。だが今月は、米長期金利の上昇を引き金に米ダウ工業株30種平均が前日比1000ドル超の急落を2度起こし、投資家心理が冷え込んだままだ。根強いリスク回避姿勢から、比較的安全な資産とされる円が買われやすくなっている。

 円相場は対ドルで昨年1年間の最高値にあたる1ドル=107円32銭を突破。米大統領選でトランプ氏が勝利し急速な円安ドル高に火が付いた16年11月中旬の水準に後退した。市場関係者の間では、目先は心理的節目の1ドル=105円が意識されるとの見方がある。

 急速な円高進行は、過去最高益を更新するペースにある日本の企業業績にもブレーキとなりかねない。

 日銀の昨年12月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業が想定する2017年度の為替レートは1ドル=110円18銭。足元の円高傾向が今後も続けば、18年度の業績予想を保守的に見積もる企業が相次ぐなどして、企業業績の拡大ペースが従来の市場の想定より遅れかねない。

 昭和電工は18年12月期の想定為替レートが1ドル=110円。加藤俊晴最高財務責任者は14日の決算発表会見で「1円の円高につき年間5億円の営業減益要因」と説明したが、「上半期は相当部分で為替予約が進んでおり、足元でダイレクトに(業績に)効いてくることはあまりない」と話した。(森田晶宏)