16日の東京外国為替市場は、日銀の正副総裁の国会同意人事案が提示された後も円高ドル安に歯止めがかからず、円相場は約1年3カ月ぶりに一時1ドル=105円台に突入した。最近は米財政赤字の拡大懸念などを背景にドル売り圧力が強く、当面は円高基調が続きそうだが、現行の大規模な金融緩和策が続くとの見方から中期的には円安傾向につながり、日本株にもプラス材料になるとの声もある。(森田晶宏)
16日の東京市場では、投機筋による仕掛け的な円買いドル売りで円相場は一時1ドル=105円55銭まで急伸。最近は、巨額のインフラ投資や法人減税で米財政赤字が拡大するとの懸念が意識されるなどしてドル売りのトレンドが強まっており、円が買われやすい。
朝方から1ドル=106円割れを試す展開の中で、日銀の正副総裁の人事案提示が伝わった。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「今回示されたメンバーなら現行の緩和策は当面維持されそうで、円安要因ともいえるが、ドル安の流れに打ち消された」と語る。
また、市場では黒田東彦氏の日銀総裁再任は織り込み済みで、雨宮正佳日銀理事と若田部昌澄早大教授も副総裁候補として取り沙汰されていたため、「特にサプライズはない」と受け止められたことも、円安反応が限られた一因となった。