【専欄】要人たちのユーモアセンス ノンフィクション作家・青樹明子 (2/2ページ)

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 するとトウ氏は即座に「分かりました」と答えた。驚く大統領に、トウ氏はこう続けた。「その人数は2000万人ですか?それとも2億人?」。カーター氏はしばし言葉を失ったという。

 朱鎔基総理(同)がカナダ・トロントを訪問したときのこと。ホテルに到着した朱氏がエレベーターに乗った途端、エレベーターが突然止まってしまったのである。故障のようだ。同乗していたホテルの社長は、真っ青になり、平身低頭、謝罪し続けたのは言うまでもない。

 「以後絶対にこのようなことがないように致します」。そんな彼に、朱氏は慰めるように言った。「なんの、なんの。以後エレベーターは中国からの輸入品を使えば問題は起きないですよ」。

 中米間の貿易不均衡は当時から存在し、朱氏の北米訪問中も、この問題が大きなテーマだった。翌日、現地の新聞は一斉にこのエピソードを報道したが、「中国の政治家には珍しいユーモアセンスの持ち主だ」などと、ほとんどが好意的だったという。

 政治家のユーモアは、個人のみならず、国のイメージも決定づける。日本の政治家にも、この人の演説を聞いてみたいと思わせるようなユーモアセンスを磨いてほしいものである。