邦人起用、日系企業から信頼 インドネシアの元技能実習生が起業

工場で社員の作業を見守る大門勉さん(左)とアグスティヌス社長(右)=2月、インドネシア・チカラン(共同)
工場で社員の作業を見守る大門勉さん(左)とアグスティヌス社長(右)=2月、インドネシア・チカラン(共同)【拡大】

 かつて日本の工場で技能実習生として働いたインドネシア人が夢だった起業を母国で果たし、今度は社長として在留邦人を雇用した。予定管理や責任感といった日本で学んだ経験に加え、日本人社員がいることで日系企業からの信頼も獲得。両国の新たな交流の形といえそうだ。

 2月下旬、首都ジャカルタ近郊のブカシ県チカランにある金属加工会社「ナガ・シナール・テラン」の工場2階。「社長、例の件ですが…」。社員の大門勉さん(70)が真剣な表情で、社長のアグスティヌスさん(41)に営業先との案件について相談していた。

 元実習生で組織するインドネシア研修生実業家協会によると、元実習生の会社が日本人を社員にした例は珍しいという。

 アグスティヌスさんは2001年から3年間、さいたま市のドラム缶再生工場で実習生として勤務。使用済みの缶の再塗装を担当し、塗料で指の皮が溶けることもあったが「若かったし日本に行ってみたかった。大変だと思ったことはない」。

 インドネシアに帰国して現地の日系塗装会社に勤めた後、09年に独立。二輪車部品などを製造する金属加工業を始めた。会社員時代のつてを生かし販路を開拓、社員約30人、年約70億ルピア(約5460万円)を売り上げる会社に成長させた。

 さらに取引先を拡大しようと営業の人材を探していた17年5月、知人の紹介で大門さんと出会った。大門さんは日本の食品容器製造会社の工場責任者として08年からインドネシアで働いていたが、16年に工場が閉鎖された。「この国でもう少し頑張りたい」と就職先を探していた。

 「業種も違うので悩んだ」(大門さん)が、17年8月に入社。日系企業への営業を担当し約20社の新規顧客を獲得した。

 アグスティヌスさんは「外国人を雇っていることで会社の信用が上がった。私の日本語力も維持される」と笑う。将来の自社ブランド製品の製造や、日本への輸出も視野に入れ、大門さんとの協力関係は続く。(チカラン 共同)