高論卓説

クールジャパン予算の肥大化 政府がやるべきはコンテンツ制作支援 (1/2ページ)

 JR小田原駅の新幹線ホームに、初老の男性が普段着で供も連れずにひとりで、背筋を伸ばして立っていた。人形浄瑠璃文楽の人形遣いで重要無形文化財保持者(人間国宝)の吉田和生さんと分かって、会釈をすると気さくに話しかけてくれた。小田原公演の「曽根崎心中」を見に来た帰りのことだ。

 神奈川県内には、江戸時代の人形浄瑠璃の伝統を引き継ぐ「相模人形芝居」が国の重要無形民俗文化財に指定されている。実は文楽ファンが多い地域なのである。

 文楽の経営は戦後、松竹が撤退したことから低迷期が続いて、国や大阪市などの補助金によって運営されてきた。2012年、当時の大阪市長の橋下徹氏が補助金の見直しの方針を打ち出して、論議を呼んだ。実は、観客動員数はこの年、年間10万人を超え、最近は20万人前後で推移している。

 観客席に若者の姿が目立つようになった、きっかけの一つは、北駒生原作のコミック「火色の文楽」のヒットである。バレリーナを目指していた少年が、けがによって夢を失い、文楽の浄瑠璃を語る太夫を目指す青春ストーリーである。

 日本のコンテンツは、コミックやライトノベル、アニメ、舞台、映画など、さまざまな形態で同じテーマやストーリーを相互に交流しながら創造されている。東京工業大学の出口弘教授は、こうした日本のコンテンツ産業のありかたについて、「超多様性市場」と呼び、世界に例がないという。

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