高論卓説

クールジャパン予算の肥大化 政府がやるべきはコンテンツ制作支援 (2/2ページ)

 歌舞伎の演目の「義経千本桜」や「仮名手本忠臣蔵」は人形浄瑠璃の代表作である。文楽が衰亡していたとすれば、北野武監督の映画「Dolls」(02年)は作られなかっただろう。死に向かって放浪する男女の若者の姿は、心中物の道行きである。

 アニメや映画、ファッションなど、日本の文化産業の海外進出の促進と人材育成などを目指して、経済産業省に「クールジャパン室」が新設されたのは、10年6月のことである。その後、クールジャパン政策は、文化庁による文化財を中核とする観光拠点や、農水省の古民家を利用した宿泊施設の整備、総務省は地方公共団体が放送コンテンツを制作する、といった予算を積み重ねて、18年度は600億円を超えた。

 貿易立国政策の延長線上であるコンテンツの「輸出」を出発点とした、クールジャパン政策は、インバウンド政策もからんで肥大化している。

 戦時中の広島県を舞台とした、アニメ「この世界の片隅に」(片渕須直監督)は16年11月の封切り以来、ロングランが続いている。世界の60以上の国と地域で上映された。エンドロールに登場するのは、資金不足を訴える片渕監督による、クラウドファンディングの呼び掛けに計約3900万円を寄せた3300人以上の団体と氏名である。山田洋次監督はかねて、国立の映画学校の設立を切望している。総合芸術である映画のさまざまな技術が衰退しては、日本映画の未来はないからだ。クールジャパン政策は、制作の現場に光を当てなければならない。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。62歳。福島県出身。

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