【インタビュー】サービス産業強化 IT活用が課題


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 □東洋大経済学部教授 滝沢美帆さん(38)

 --日米独英仏5カ国の産業別労働生産性比較を初めて取りまとめた

 「まず2015年の最新データで日米を比較すると、米国の1時間当たりの付加価値をベースにした生産性を100としたとき、日本の製造業は67.4、サービス産業は50.7%。化学産業は米国を上回っている。だが、サービス業は以前より差が縮まったものの、依然格差は大きい」

 --欧州との比較は

 「製造業で、日本とほぼ同等なのが英国。ドイツとフランスは日本を1割程度上回っている。サービス産業は、各国に対し日本が大きく劣っており、ドイツや英国の3分の2程度だ。卸売り・小売り、宿泊・飲食、運輸・郵便は5カ国の中で最も低い。だが、これは改善の余地が大きいことを示している」

 --日本のサービス産業の生産性が低い要因は

 「日米で比較すると、日本は米国よりも1人当たりの資本が小さいからだ。米国は、サービス産業でも機械・設備が導入され、それを使いこなしている。例えばドラッグストアでも、セルフレジを導入している店舗が急激に増えている。日本は機械・設備の導入が遅れている。中小企業の比率が高く、資本が小さいからだ」

 --日本のサービス品質の高さはどう影響するか

 「日本生産性本部のリポートで日米のサービスの質の差を測定し、米国で日本と同じサービスの質が提供されるのなら、2割程度高い費用を払ってもいいという結果が出た。だが、これを加味してもまだまだ差は大きい」

 --サービス産業の生産性向上のポイントは

 「日本は欧米に対し、IT投資の水準が低い。特に米国が欧州と比べても高いのは、アマゾンやグーグルなどの巨大IT企業の存在と、それに関連する事業が起きているからで、日本はIT活用が課題になる」

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【プロフィル】滝沢美帆

 たきざわ・みほ 2008年一橋大学博士。東洋大学准教授、ハーバード大国際問題研究所日米関係プログラム研究員などを経て、17年4月から現職。東京都出身。