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放送制度改革 規制改革会議の大田弘子議長「放送法4条撤廃の議論していない」 安倍晋三首相は意欲も改革機運薄れる

 安倍晋三首相は16日の規制改革推進会議で「未来を見据えた放送のあるべき姿を議論してほしい」と述べ、放送制度改革の議論の必要性を強調した。首相は放送とインターネットの融合が進む中、改革は不可避だとの問題意識を持っている。ただ、会議では政府内で検討された放送法4条撤廃などの大胆な見直しに踏み込もうとする機運は薄れつつある。

 「私たちも(4条撤廃などの改革案を伝える)報道に戸惑っている。議論は全くしていない」。会議終了後、記者会見した大田弘子議長は4条撤廃の議論はしていないと強調した。

 放送制度改革をめぐっては、首相が1月の経済団体の会合で、ネット番組への出演を振り返り、技術革新に法体系が追いついていないとの認識を表明。推進会議は2月から作業部会で本格的な議論を始めた。

 ただ、政府内で改革へのスタンスは同じではなかった。「唐突だ。改革の結論は出ていたはずだ」。総務省幹部はこう振り返る。推進会議は昨年11月、放送や通信に使う電波の有効利用を進める規制緩和策を首相に答申。総務省は有識者会議を設け、電波の有効利用に関する議論に乗り出していた。

 そうした中、今年3月に4条撤廃を含む改革案のペーパーが出回ると、経済産業省が作成に関わっているのではないかとの観測も流れ、総務省は警戒感を強めた。在京民放キー局5社は反対の立場を鮮明にした。自民党内からも「言論や民主主義にも関わる」(岸田文雄政調会長)などの慎重論が相次いだ。

 内閣支持率が下落しているだけに、強引に進めようとすれば政府・与党内の異論や反発は広がり、9月の自民党総裁選にも影を落としかねない。政府関係者からは、「首相官邸からの改革に向けた風圧は急速に弱まった」との声も漏れる。

(笠原健)

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