【中国を読む】「落としどころ」の見極め必要 米中貿易戦争、日本への影響は (3/3ページ)

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 仮にこれらが全て実施されれば、米国は対中輸入額の3割以上に制裁を科すこととなる。中国も対抗措置で応酬する貿易戦争に発展すれば、双方の経済に甚大な悪影響が出ることは避けられそうにない。

 下押し要因に

 足元の世界経済は依然として自律回復の動きを続けているが、世界の貿易量の底入れが進んできたことが牽引(けんいん)役になっている。しかし、貿易制裁の動きが広がれば、世界的な貿易の萎縮を引き起こすとともに、そのことが世界経済の下押し要因になる。またアジアをはじめとする新興国経済は構造上輸出依存度が高く、世界的な貿易鈍化による悪影響が表面化しやすい。

 日本にとっては、中国やアジア新興国向けの輸出拡大が足元の景気回復の牽引役となっており、これらが鈍化することによる影響を受けやすい。米中間の協議の行方は極めて混沌(こんとん)とした状態が続いているが、この行方は日本経済にとっても無視し得ない。トランプ政権は日本に対して貿易戦争を仕掛ける可能性もあり、米中両国の「落としどころ」を見極める必要がある。

【プロフィル】西●徹

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。40歳。福岡県出身。

●=さんずいにウかんむりに眉の目が貝