【よむベトナムトレンド】従来型タクシーと配車アプリ企業の競争激化

南部ホーチミン市中心街の路上に停車するマイリンのタクシー。ベトナムのタクシー業界は配車アプリ企業に顧客を奪われている(ブルームバーグ)
南部ホーチミン市中心街の路上に停車するマイリンのタクシー。ベトナムのタクシー業界は配車アプリ企業に顧客を奪われている(ブルームバーグ)【拡大】

 ベトナムでは、地場のビナサンやマイリンなど従来型タクシー企業と米ウーバー・テクノロジーズやシンガポールのグラブなど配車アプリを通じて輸送サービスを提供する企業との市場競争が激化している。

 配車アプリ企業は4年ほど前からベトナムで事業を展開してきた。IT(情報技術)を活用して使いやすいうえに、価格面やドライバーの身元保証・評価制度を通じて安全性を高めるなどして、従来型タクシー企業を圧倒し、2016年頃からタクシー市場におけるシェアを大きく伸ばしている。今年に入り、両陣営の企業間競争に影響を与えうる動きが相次いで生じた。

 ◆ついに法廷闘争へ

 今年2月、ベトナム南部を中心にタクシー事業を展開するビナサンがグラブを相手取り、不正競争を主張し裁判所に訴訟を起こした。ビナサンはベトナム最大手の従来型タクシー企業で、10年から売り上げと利益を順調に伸ばしてきたが、ウーバーやグラブが市場に参入した14年頃から成長に歯止めがかかり、16年上半期以降は業績が右肩下がりとなった。

 これに対してグラブは顧客の獲得に成功している。アプリを通じた手数料徴収というビジネスモデルのため、数値による単純な比較はできないが、いまや利用可能な車の台数はビナサンの6300台をはるかに超える1万7000台に上るとされていることなどから、成長の勢いがうかがえる。

 ビナサンは、グラブが低価格でサービスを提供し顧客を獲得できるのは課税負担が小さく車の台数制限も適用されないIT企業として登録しているからであり、本来なら実質的なビジネス形態に沿って輸送企業として登録すべきだと指摘する。そのうえで、現状の是正とこれまでの不正競争によりビナサンが被った2億円あまりの損害を賠償すべきだと主張している。これまでも同じ主張をしてきたが、裁判に訴えることで公的にも認めさせようとする意図があるのだろう。この裁判の結果は、配車アプリ企業のビジネスモデルの根幹に関わってくるため注目を集めている。

 ◆通行禁止を提案

 従来型タクシー企業は、私的な政治活動も行って、ウーバーやグラブの勢いを止めようとしている。その成果の一つとして、ハノイ市交通運輸局は今年2月、ウーバーとグラブのハノイ市内の主要道路11本における通行を制限することをハノイ市人民委員会に提案した。基本的には混雑緩和が狙いで、ラッシュ時間帯のみの通行禁止となるが、これが実現すれば、ウーバーとグラブに大きな打撃となる。

 一方で、3月25日にはウーバーが東南アジア事業をグラブに売却することを発表した。グラブ側は事業買収により、ベトナムにおける配車アプリ事業をほぼ独占することになる。いまの勢いで配車アプリが伸び続けると、ベトナムにおけるグラブの成長は、一段と弾みがつくと予想される。従来型タクシー企業と配車アプリ企業との競争は今後、激しさを増しそうだ。

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 B&Company株式会社:日系で初・唯一のベトナム市場調査専門企業。消費者や業界へのアンケート・インタビュー調査と参入戦略を得意分野としている。b-company.jp

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