CAT債発行、最高更新か 高利回りに緩和マネー流入

 今年の大災害債(CAT債)発行が過去最高を更新するとの見方が出ている。起債環境が整う中で高利回りに緩和マネーが向かっている。

 CAT債発行はブルームバーグのデータによると1~3月期で40億6200万ドル(約4360億円)。すでに2017年の3割に達した。米再保険ブローカー、ガイ・カーペンターの勝山正昭マネジングディレクターは18年について「昨年超の可能性は十分にある」と予想する。投資家の認知度が増し、再保険レートとの比較でCAT債レートが下がり発行が増えた17年の状態が続いているとしている。

 CAT債では昨年北米を襲ったハリケーンで保険リンク証券(ILS)ファンドが損失を出した。これを受けてCAT債レートは一時上昇したが、逆に投資好機とみたマネー流入でレートが下がった。スイス再保険算出のグローバルCAT債指数の総合リターンは17年7~9月期にマイナス5.04%に陥った後、10~12月期はプラス3.88%、18年1~3月期は同1.76%と回復、マネー流入が続いている。

 ◆投資の分散効果も

 ムーディーズ・インベスターズ・サービスの牧本聡一郎シニアアナリストは、世界的な低金利環境の中でCAT債といった再保険市場において「ヘッジファンドや年金基金などの機関投資家が投資収益を求めて多額の資本を供給している」と指摘した。大規模自然災害リスクを引き受ける能力を高め、レートを押し下げているとしている。

 ハリケーンや大地震といった自然災害が発生すると利払いや償還額が減るCAT債は、その分格付けが同じ普通社債より利回りが高い。株式や債券を含む伝統的資産との相関が低く投資の分散効果が得られるメリットもある。リスクの数値化が難しく自己資本規制の厳しい銀行や保険会社は投資しにくい。17年は世界での発行額が初めて100億ドルを超えた。

 日本勢のCAT債発行も1~3月期で12億2000万ドルと世界全体の3割を占めた。地震リスクを対象に全国共済農業協同組合連合会(全共連)が7億ドル、東京海上日動火災保険が2億ドル、台風・洪水・地震火災リスクを対象にMS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の損保2社が合計3億2000万ドルを発行した。

 保険会社にとってリスク分散は再保険が基本だが、毎年の契約更改があり大災害発生でのレート高騰リスクや再保険会社破綻というカウンターパーティリスクがある。これに対してCAT債は償還まで再保険料を固定できる。さらに投資家から集めた資金を担保となる信用リスクの低い債券で運用するため、カウンターパーティリスクや担保の価格変動リスクをほぼ排除できる。

 ◆戦略的配分が重要に

 MS&AD傘下の三井住友海上火災保険のCAT債は期間4年で、担保の欧州復興開発銀行(EBRD)債の利回りに1.9%上乗せ(スプレッド)した利率を投資家に支払う。洪水を初めて対象にするなどリスクのカバー範囲を拡大させたが、スプレッドは16年発行の前回債2.5%より低くなった。

 ILSファンドを運用するイーストポイントアセットマネジメントの新原輝久・共同最高経営責任者(CEO)は、CAT債と北米ハイイールド市場との比較で「利回り面ではCAT債に相対的妙味があるようにも見える」と指摘した。昨年の災害イベントでCAT債のスプレッドがややワイドニングしているのに対し、北米ハイイールド市場ではタイトニングが進んでいるとしている。

 グローバルCAT債指数の総合リターンは、北米ハイイールド債と比較すると、より低いボラティリティー(変動性)で同じ程度のリターンを達成してきた。

 新原共同CEOは、市場規模やリターンソースも異なるため一方に集中するのではなく「中長期的な戦略配分がより重要になってくる」との見方を示した。(ブルームバーグ Komaki Ito)