「世界一がらがら」のスリランカの空港、中国に譲渡も 権益めぐりインドも触手

 インド洋の島国スリランカに「世界一がらがら」と呼ばれる国際空港がある。ラジャパクサ前大統領の出身地付近に5年前に開港したが、利用客が少なく経営難に苦しむ。開発を支援した中国への権益譲渡の可能性があり、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を警戒するインドも触手を伸ばす。

 スリランカ南部ハンバントータから北に20キロのジャングルに「マッタラ・ラジャパクサ国際空港」はある。3月末に訪ねると、搭乗口に利用客の姿はなかった。年100万人が利用する触れ込みだったが、女性従業員は「週に4便程度の離着陸しかない」と明かした。

 施設内には一時、コメが保管され、地元で「米置き場」とやゆされる。大学生、チャトルダ・イサランガさん(24)は「無人の空港と聞いて見学に来た」と話し、観光名所にもなっているようだ。

 親中国のラジャパクサ氏が主導し、2013年に開業。事業費約2億ドル(約218億円)の大半を中国が支援した。僻地(へきち)のため客は来ず、既に1億ドルの負債を抱えているとされる。

 同じく中国の支援で開発されたハンバントータ港も経営難に苦しむ。15年の大統領選でラジャパクサ氏を破ったシリセナ政権は昨年、借金免除と引き換えに中国に運営権を99年貸与することで合意した。港への一般人の立ち入りは禁じられ、周辺に中国食材店が進出。「中国が土地を奪う」(地元ガイド)と懸念されている。

 空港の権益も中国が獲得すれば、地域大国インドにとって脅威となる。インドは昨夏、航空学校の新設など空港への投資交渉に乗り出したが、難航している。外交筋は「インドは民主主義国家。利益が出ない空港投資は難しいのではないか。利益度外視が可能なのは中国だけ」と指摘し、懸念を募らせている。(ハンバントータ 共同)