通貨発行権めぐる構想否決 スイス国民投票 中銀だけ容認に反対

 スイスで10日、スイス国立銀行(中央銀行)に唯一の通貨発行権を認める「ソブリンマネー構想」の是非を問う国民投票が行われた。反対が優勢とする事前の世論調査通り、投票者の4分の3を上回る75.7%が反対票を投じ、否決された。

 現行の部分準備銀行制度下で、銀行は中銀の当座預金口座に預ける以上に多額のお金を貸し出している。

 通貨供給量における民間部門の預金通貨は中銀が発行する現金通貨の量を大きく上回り、それが資産バブルなどがきっかけとなった2008年の金融危機の原因とされた。スイスも当時、国内最大行UBSの救済を余儀なくされた。

 ソブリンマネー構想の支持者は、通貨量のかじ取りを中銀だけに委ねれば、資産バブルを防ぐ対策をより多く講じることができると主張。一方、反対派はスイス政府と中銀を中心に、同構想がスイス経済を損ない、金融政策を政治化しかねないとキャンペーンを展開した。

 今回の国民投票の結果について、チューリヒの研究機関ソトモの政治学者、マイケル・ハーマン氏は「スイス人は用心深いことで知られ、特に金融の領域でその傾向が強い。ソブリンマネー構想の採択は完全に未知なる領域を意味する。有権者は“不確実性は常に安定の害になる”と考え、反対した」と分析する。

 企業寄りの自由民主党のルディー・ノーザー議員は「さまざまな米国、英国企業の本社からスイス法人に、“そもそもスイスで何をやっているのか、こんなことをどう続けていくつもりなのか”といった問い合わせが寄せられている。今回が初めてではないからだ。国際企業はこうした実験的取り組みを行っている場所に拠点を置きたがらない」と話す。

 ただ英国で同様に通貨改革に取り組む団体、ポジティブマネーは、スイスの国民投票での否決を「通貨創造を民間で行うべきか、公の手に委ねるべきかをめぐる、世界的な協議の始まりだ」と評価する。

 10日の国民投票では、オンラインカジノの規制を厳格化した「新賭博法(連邦法)」の是非も問われ、可決された。(ブルームバーグ Catherine Bosley)