【データで読む】新興国通貨、ファンダメンタルズで明暗

 4月下旬に米長期金利が3%に達したことをきっかけに、アルゼンチンの通貨ペソが急落した。同国中央銀行は5月4日に政策金利を40%に引き上げたが、通貨下落は止まらず、国際通貨基金(IMF)に支援を要請した。2015年に就任したマクリ大統領の改革は国際的に評価されてきたが、高インフレや財政・経常赤字などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の課題を克服するには至らず、潮目が変わった国際金融市場にもまれる展開となっている。

アルゼンチンのマクリ大統領。通貨下落が止まらない中、経済手腕が問われそうだ(AP)

アルゼンチンのマクリ大統領。通貨下落が止まらない中、経済手腕が問われそうだ(AP)

 17年には、米国が慎重に利上げを進める中、新興国通貨は総じて安定していた。しかし、18年に入って米金利が上昇すると、以前から下落基調にあったアルゼンチン・ペソやトルコ・リラだけでなく、ブラジルやインドなどの通貨が下落した。一方で、マレーシアやタイなど、東南アジアの通貨はおおむね安定しており、影響は一様ではない。通貨が下落している国は、高インフレや経常赤字などのファンダメンタルズに弱さを抱えるのに対し、東南アジアでは、1997年のアジア通貨危機を教訓に、各国が経済面で耐性を高めてきたことが奏功している。

 米国では2月に続き、4~5月にも賃金などの経済指標の改善や原油価格の上昇に反応して金利が上昇しており、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融正常化を進める中で、新興国は断続的な資金流出圧力にさらされる。トルコのほか、インドやインドネシアなどが通貨防衛を念頭に利上げに転じているが、金利上昇は経済活動の悪化を通じて、一段の通貨安要因となる可能性もある。ファンダメンタルズ面で弱さを抱える国は、通貨売りの標的になりやすい状況が続く。(編集協力=日本政策投資銀行)