【高論卓説】外来種の動物が鳴らす? 都市への警鐘 住宅街で出没、相次ぐ被害 (1/2ページ)

捕獲されたアライグマ
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 「山椒魚(さんしょううお)は悲しんだ。彼は彼の棲家(すみか)である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。」

 井伏鱒二の名作短編「山椒魚」の冒頭である。岩屋に紛れ込んだカエルが出られないように出口を自分の頭で塞いで、いくつもの季節を重ねるさまはオオサンショウウオを思わせる。

 東京都武蔵野市にある井の頭公園の水生物館の小さな水槽に入れられている、トウキョウサンショウウオの体長は、10センチほど。オオサンショウウオが1メートルにも達するのと比べるとかわいらしい。西多摩郡日の出町の天然記念物である。絶滅危惧種として環境省のレッドリストに入っているのは同じである。

 トウキョウサンショウウオの生息を追いつめているのは、アライグマである。1970年代にヒットしたテレビアニメの主人公になったことから、ペットとして輸入された。幼獣のころは比較的穏やかな性格だが、成獣となると獰猛(どうもう)になって飼いきれない。やむを得ずに山に放たれて野生化して繁殖し、今では全国で目撃されている。雑食性で水動物も好み、トウキョウサンショウウオも捕食する。

 東京都はアライグマとともに、ハクビシンを外来種として被害対策と捕獲に取り組んでいる。ハクビシンは明治時代から毛皮用に輸入されたのが、野生化したと推定されている。動植物の被害にとどまらず、空き家や人が住んでいる住宅でも床下や天井裏に住みついて、糞(ふん)害をもたらしている。接触や経口感染によって、皮膚病や食中毒、ペットへの感染、国内ではまだ発生していないが狂犬病の可能性もある。

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