【高論卓説】外来種の動物が鳴らす? 都市への警鐘 住宅街で出没、相次ぐ被害 (2/2ページ)

捕獲されたアライグマ
捕獲されたアライグマ【拡大】

 世田谷区が主催する「ハクビシン・アライグマ被害対策講習会」に参加した。用意されていた約50席は満員だった。23区最大の約90万人の人口を誇る住宅街にも、外来種の動物による被害は現実のものになっている。区は、糞尿にまみれた天井1カ所の清掃に補助金が出ることや、要望があれば捕獲する箱わなを提供することなどを説明する。昨年の捕獲数は両種で計約30頭に達した。

 講演した東京野生生物研究所の小堀睦さんは、文京区本郷の東大赤門の真ん前の電線をつたい歩きしているハクビシンの写真を示した。捕らえたハクビシンに発信装置を付けて追跡したところ、行動範囲は130ヘクタールにも及んだという。

 最新の2013年住宅・土地統計調査によると、住宅総数6063万戸のうち空き家は820万戸、空き家率は13.5%である。都内の空き家は82万戸、空き家率は11.1%である。

 世田谷区中心部の「木造密集地」を歩いた。都が条例に基づいて、首都直下型地震などに備えるための防火規制区域に指定して、防火住宅への転換を図っている。低層のマンション化が進む地域の中で、草木に入り口を塞がれ、破れ障子が目につく空き家がある。

 外来種の動物たちは、都市の再生と防災に対する警鐘を鳴らしているように見える。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。62歳。福島県出身。