ミャンマー、介護人材派遣で一挙両得 訪日実習生、将来の牽引役に

外国人実習生としての派遣を目指し、ヤンゴンの日本語学校で学ぶミャンマーの女性=5月(共同)
外国人実習生としての派遣を目指し、ヤンゴンの日本語学校で学ぶミャンマーの女性=5月(共同)【拡大】

 介護士不足が叫ばれる日本に、ミャンマーで育成した人材を外国人実習生として派遣しようという動きがある。ミャンマーでは高齢者の面倒は家族がみるべきだとの意識が強く介護施設が乏しい一方、今後は高齢化で介護需要の増加も予想される。派遣人材を将来、ミャンマー国内の介護産業の牽引(けんいん)役として市場獲得を目指す狙いもあり、日本企業の関心も高い。

 最大都市ヤンゴンの日本語学校に、介護での実習生を目指す女性たちの姿があった。入国時に「日常的な場面でややゆっくり話される会話であれば、ほぼ理解できる」とされる日本語能力が必要なため、表情は真剣だ。

 日本では昨年11月、外国人が知識や技術を習得し、母国で生かす外国人技能実習制度に、介護職種が追加された。介護は低賃金、重労働といったイメージが広がり、慢性的な人手不足に悩む介護現場の期待は大きい。

 介護関連事業を手がける「さくらコミュニティサービス」(札幌市)と「笑顔いちばん」(岐阜市)は2015年、ミャンマー企業と合弁で、介護人材を養成する会社をヤンゴンに設立した。実習生となる人材をミャンマーで育て、この会社の関連企業が送り出し機関となり、日本各地の受け入れ監理団体を通じて各施設に派遣する仕組みだ。

 合弁会社のアウン・リン・ティン社長は「ミャンマー人は敬虔(けいけん)な仏教徒が多く、年上に敬意を払う」と利点を強調する。ミャンマー人にとっては賃金面も魅力という。

 ミャンマーは、人口に占める若年層の割合が高いが、15年に約5%だった65歳以上の人口が40年には倍増するとみられ、将来は高齢化が進むとされる。アウン・リン・ティン社長は、実習生が帰国後、ミャンマー国内の介護産業を引っ張っていくことに期待を示した。

 外国人技能実習制度は1993年に導入され、これまで農業や製造業が対象となった。ただ、実習生を酷使する例が相次ぎ、改善を求める声が根強い実情もある。滞在期間は最大5年。実習生を目指すセン・セン・モーウさんは「日本で学び、いつか故郷に介護施設をつくりたい」と語った。(ヤンゴン 共同)