「内部留保」過去最高も…貿易摩擦で企業慎重、賃金上昇に回らず (1/2ページ)

設備投資は過去最高を更新したが、内部留保は積み上がる一方で賃上げにはつながっていない
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 第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」を背景に日本経済は好転し、2017年度の企業の経常利益は過去最高となった。しかし、その利益は企業で働く従業員の賃金上昇になかなかつながらず、内部留保が過去最高額を積み上げた。米国と中国の貿易摩擦で世界経済が不透明な中、企業の慎重姿勢は続くとみられ、賃上げによる「経済の好循環」の実現にも懸念が募る。

 財務省が3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となり、過去最高を更新した。

 12年12月に発足した第2次安倍政権は金融緩和や法人税減税などの経済政策で、企業の業績回復を後押ししてきた。その狙いは、企業収益を設備投資や賃上げにつなげることで個人消費を活発化させ、さらに企業業績を上向かせる経済の好循環を実現することにある。

 企業業績は政策の効果もあって好調だが、必ずしも賃上げにはつながっていない。企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は前年度の67.5%から下がり66.2%にとどまっている。

 投資についても、人手不足を背景に省力化投資などに踏み切る企業は増えてはいるが、経常利益の伸びに比べる投資の伸び率は小さく、企業が利益をため込む傾向は大きく変わっていない。

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