【データで読む】シンガポール、配車サービスの普及と課題

シンガポールの中心街にあるタクシー乗り場に横付けするグラブタクシー(ブルームバーグ)
シンガポールの中心街にあるタクシー乗り場に横付けするグラブタクシー(ブルームバーグ)【拡大】

 シンガポールでは、政府が渋滞回避のために自動車の新規取得を管理している。車の取得に併せて必要な自動車所有証の価格は高騰しており、高額な諸税と相まって保有コストは極めて高い。こうしたなか、2013年以降は、米ウーバーやシンガポールのグラブなどの事業開始を契機に配車サービスである「プライベート・ハイヤー・カー(PHC)」の普及が進んでいる。近年は、PHCを含むレンタカーの台数が増加する一方で個人所有車が減少しており、15年以降は、PHCが普及する中でタクシーやその利用客数も減少している。自動車の取得が困難なシンガポールでは、安価で利便性の高い移動手段として配車サービスへの期待は大きい。

 一方、課題も存在する。シンガポール政府は、タクシー事業者からPHC事業者との公平な競争環境の整備を求められ、17年7月にPHC事業の免許制度を導入した。PHC免許には18年5月までに7万6000件もの申請があったが、事務的な煩雑さや必要となる知識水準の高さなども相まって試験自体を受けていない者も多く、最終的に免許取得に至ったのは3万件程度にとどまった。残り約4万件には、早期に申請したことで18年6月末まで一時的に事業資格を得た2万件が含まれるが、この資格も18年7月に失効となった。こうした動きを背景に、国内でサービスを提供するPHCの減少が懸念される。

 利用者の利便性向上のための配車サービスの普及と、既存のタクシー事業者との共存が可能な環境整備は、トレードオフ(二律背反)の関係にある。シンガポール政府は、新たな配車サービスの普及を図りつつ、2つの要素のバランスを取ることに腐心している。(編集協力=日本政策投資銀行)