香港と本土つなぐ「大湾区」計画に課題多数 制度の違いが「障壁」、最小化に焦点 (2/3ページ)

広深港高速鉄道の西九龍駅では、毎日決まった時間に香港の旗と中国国旗が掲げられる(中国新聞社)
広深港高速鉄道の西九龍駅では、毎日決まった時間に香港の旗と中国国旗が掲げられる(中国新聞社)【拡大】

 実質GDP成長率は16年が2.1%、17年が3.8%で、直近の18年第2四半期は3.5%と前期から1.1ポイント減速。18年通年予測は、米中貿易摩擦など外的マイナス要素の増加から3~4%に据え置かれた。

 また不動産は高騰し、香港統計年刊によると、香港島では面積40~69.9平方メートルの住宅の1平方メートル当たりの平均販売価格が06年の5万2213香港ドル(約75万円)から16年は14万103香港ドルに上昇。極めて狭い「棺おけハウス」に暮らす住民の存在は社会問題ともなっている。

 香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は8月に北京市で開かれた大湾区の全体会議で、「香港とマカオが発展チャンスをつかむのにプラスとなる」と述べた。

自由喪失を懸念

 日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所の中井邦尚次長は「香港は貿易額は世界7位、金融センターとして同3位、空港別の貨物取扱量では同トップ」とした上で、「香港は世界上位100以内に入る大学が5校あるが、製造業の比率が低い。香港でのイノベーションの発展に向けては、生産基地を持つ広東、イノベーション拠点となりつつある深センとの連携が必要になる」と指摘する。

 ただ、制度の異なる特別行政区を含む地域発展計画は容易ではない。

 体制構築において課題となるのは人、モノ、金の流れで、中国メディアによると、境外(海外および香港、マカオ、台湾)の人が183日を超えて本土で働くと本土の所得税が課せられるほか、研究設備の輸送で関税がかかり、共同で科学研究を行った場合でも経費の合同精算ができないといった現状がある。中井氏は「制度の違いに起因する『障壁』がゼロになることはないが、いかに最小化していくかが焦点となる」と話す。

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