製薬大手、抗菌薬から撤退相次ぐ 開発費高騰も少ない承認件数 (1/2ページ)

 スイスの製薬大手ノバルティスが今年7月、感染症治療薬の研究・開発から撤退する方針を発表した。薬剤耐性菌の急増にもかかわらず、世界有数の製薬大手が抗菌薬の研究・開発を断念する背景には、費用対効果の問題がついてまわる。

実を結ぶのは2、3件

 新しい抗菌薬の開発費は高騰が続く一方で承認件数が少ない。市場に投入されても、抗がん剤や慢性病治療薬とは比べものにならないほどの売り上げにすぎない。医薬品アクセス財団の研究部門ディレクター、ガブリエル・ブリューヘルマンス氏によると、世界で進行中のおよそ275の研究プロジェクトのうち、実を結ぶのは2、3件だけだ。

 米デューク大学のマーゴリス・センターの研究によれば、2000年以降昨年までに承認された抗菌薬16件のうち、1億ドル(約112億円)以上の年間売上高を達成したのは5件しかない。数十億ドルを稼ぎ出す抗がん剤の新薬に比べ微々たるものだ。

 最も高額な抗菌薬は1日当たりおよそ1000ドル。処方期間は数日か数週間で、数カ月や数年単位で処方される抗がん剤や慢性病治療薬に比べ売り上げはしれている。巨額開発費の回収が難しい抗菌薬で、公的支援による研究開発を促そうとしても目に見えた効果は上がっていない。

 ノバルティスは撤退理由に「リソースの優先順位」を挙げた。今後は自社が抱える実験薬の提携先を探すという。かつて抗菌薬で業界のリーダー格だった英アストラゼネカは2年前に抗菌薬事業から手を引いた。

 米アレルガンは5月に撤退を表明。仏サノフィは提携先の独バイオ医薬品会社エボテックに部門を移管し、米メディシンズはメリンタ・セラピューティクスに事業を売却した。この領域で最大手の英グラクソ・スミスクラインですら、一部資産の見直しを表明。「抗菌薬の新たな研究・開発を奨励し、それに報いる有意義な方法」の必要性を訴える。

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