【高論卓説】自然災害による損害の法的責任 被害者救済難しく自衛措置が必要 (1/2ページ)

多数の電柱が倒れ道路をふさいだ現場=5日午前、大阪府泉南市新家(奥清博撮影)
多数の電柱が倒れ道路をふさいだ現場=5日午前、大阪府泉南市新家(奥清博撮影)【拡大】

 今年の夏は、豪雨災害や台風21号、地震など特に大きな自然災害に見舞われた。このため、8月からは一般市民を対象とした電話法律相談において、自然災害によって被害に遭った、あるいは近隣に迷惑をかけたという相談が目立った。

 特に台風21号の後には、瓦や看板が強風にあおられて飛んできてマイカーが傷ついたとか、隣家の樹木が倒れてきて家屋の一部が破損したという相談が多かった。

 想定外の大規模な災害では、加害者側のみならず被害者側も「天災だから仕方ない」と漠然と考えている人が多い。しかし、近隣の家の瓦は飛んでいないのに築年数の古い特定の建物の瓦だけが飛んだという相談や、倒れた木の樹齢が古かったり、以前から少し傾いたりしていて近隣住民が危ないと思っていたという相談もあった。

 このような自然災害で自分の所有物が他人に被害を与えた場合、法的にはどのように考えるのが正しいのだろうか。民法は、土地の工作物や樹木などの設置または保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を与えたときはその損害を賠償する責任を負うと定めている(711条)。本来は、故意や過失がなければ責任を負わないというのが近代の法律の一般的なルールである。

 しかし、711条は工作物などの設置保存に不完全な点があれば、個々の加害行為に関する故意や過失がなくても責任を負うものとしている。なぜこのような特例が設けられているのか。それは工作物や樹木などのように、場合によっては他人に被害を与える可能性のあるものを所有する者は、そのような危険に見合った責任を負うべきだという思想に基づく。この危険を内在する工作物には、瓦や看板はもとより、エアコンの室外機など建物に設置された機械も含まれると広く解釈されている。

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