米中の貿易戦争は、いつ、どのような形で決着するのか、はっきりしない。ただ、中国のメディアに載った論評などから、中国がこの貿易戦争をどのように受け止めているかを知ることができる。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)
中国共産党機関紙「人民日報」(9月11日付)に掲載された論評は、過去500年間の大国の興亡の歴史を振り返り、新興国家が真の強国に成長する過程において、10年前後の鍵となる段階があると指摘し、中国は今、その段階にあるとの認識を示している。
新興国家はこの段階で極めて大きなリスクと挑戦に直面し、それをいかに切り抜けるかが興亡の鍵であり、その成功例がかつての英国や今日の米国であり、失敗例が戦前のドイツや日本、それにソ連だったと述べている。
論評はさらに、「新興の国家が発展の鍵となる段階で既成の国家から圧力を受けるのは、普遍的な歴史的現象である」と述べている。つまり、新興の大国である中国が既成の大国である米国から圧迫され、封じ込められるのは、歴史上見慣れたことだと受け止めているのである。そして、米国が仕掛けた今回の貿易戦争は、中国をライバルとみなす米国によるライバルつぶしとみているのである。