【中国を読む】新たな段階に突入した米中貿易摩擦 “全面戦争”の影響は (3/3ページ)

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 総力戦で景気下支え

 中国政府もこうした影響を懸念しており、7月からの自動車関連や家電、加工食品や衣料など幅広い日用品を対象に関税を引き下げることで対応してきた。また、11月からは機械関連や電気製品、繊維製品など1500を上回る品目を対象に関税を引き下げる。さらに、年明け以降は付加価値税や法人税の引き下げが行われてきたが、10月には個人所得税も引き下げられる。

 中国政府は、総力戦で景気下支えに動く姿勢を示した格好と捉えることができる。

 ただし、足元における中国の財政構造が抱える問題を勘案すれば、中国政府の対応によってそのゆがみを一段と広げるリスクもある。中国では税収に占める個人所得税の割合は1割にも満たないなか、その割合が一段と低下する可能性がある。

 また、さまざまな減税措置が行われる一方、景気下支えに向けた公共投資の拡充など歳出拡大圧力に伴い、財政状態が急速に悪化する可能性も懸念される。米中貿易戦争はいよいよ泥沼化の様相を呈するなか、中国側にとっても経済や財政などさまざまな面で難局が待ち構えているといえよう。

【プロフィル】

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。40歳。福岡県出身。