タイ奥地の少数民族、一部に変化 狩猟やめゴム園など勤務も

タイ南部ヤラ県ハラバラの家で、国境警察隊から医薬品を受け取るピセさん(左)(共同)
タイ南部ヤラ県ハラバラの家で、国境警察隊から医薬品を受け取るピセさん(左)(共同)【拡大】

 マレーシアとタイ南部の国境地帯に、原始的な狩猟や農作を営む少数民族が住んでいる。「アスリ人」と総称される先住民族で、大半はマレーシアに住むが、タイ南部にも少数が居住し、一部はゴム園で働き始めるなど生活が様変わりしている。だが住居は人里離れた森林地帯で、今もタイ国境警察隊が届ける食料や医薬品が生命線だ。

 「頼まれた鎮痛剤を持ってきたよ」。タイ南部ヤラ県ハラバラ、ダム湖のほとりの住居で、国境警察隊のポロミン上級曹長が薬を差し出すと、アスリ人のピセさんが笑みを浮かべた。

 マレー語で「元来の人」を意味するアスリ人はマレー半島に約17万人いる。うちタイに住む数百人は狩猟などをして暮らすが、ピセさんら一部の暮らしが変化している。

 ピセさん一家11人は3年ほど前に奥地での暮らしをやめた。「(1980年代に)ダム湖ができて森が減り、狩猟による獲物や、キャッサバなどの食料調達が困難になった」ためだ。ピセさんは長男、ナコーさんとゴム園で働き、2人合わせて週2000バーツ(約6800円)の収入を得ている。

 食生活の変化で家族に虫歯も増えたが「歯磨きを教えても、やろうとしない」とポロミン曹長は苦笑いする。

 靴も履きたがらない。「森の中を歩くには、はだしが一番」とピセさん。森で蜂蜜やハーブを集めて警察隊が運んでくるコメや即席コーヒー、医薬品と交換する。

 タイ国内の他の少数民族のように国籍付与を受ければ医療や教育制度の恩恵を受けられるが、ピセさんは、まだそれを望んでいない。

 住居付近に学校はなく、子供たちは一日中、遊んで過ごす。ピセさんらはラジオから流れる歌謡曲を聴くのが楽しみだといい、現代的な生活にも親しんでいる。(ハラバラ 共同)