【論風】世界に貢献する「日本のこころ文化」 東京に内外への発信拠点を (1/2ページ)

土居征夫・武蔵野大学客員教授
土居征夫・武蔵野大学客員教授【拡大】

 米欧先進国の政治や社会の混乱、ロシア、中国をはじめとする新たな強権政治の台頭、世界的に広がる格差と分断、人工知能(AI)の急速な進展による社会の変革と不安、異常気象と災害の多発。日本も世界も人心は荒れ、未来への閉塞(へいそく)感が強まりつつあるようにみえる。そのような中で、世界・人類にとってかけがえのない日本の魅力が、注目され始めた。世界は、新しい社会を再構築していく「希望のビジョン」を必要としているが、日本が長い歴史の中で培ってきた「こころの文化」はこれに応える力をもっている。(武蔵野大学客員教授・土居征夫)

 ◆近代日本の原動力

 評論家、日下公人氏は近著「『情の力』で勝つ日本」で、日本の社会は知・情・意の「情」を重視してきた結果、直観力、情報読解力、情緒、ひらめきなどに優れた子供を育て、情の力で知の面でも、意の面でも優れた人材を育ててきたと述べている。人間は「知」の面、論理的思考だけではだめで、ギリシャの諺でも「歴史を創るのはロゴス(論理)ではなく、パトス(情)とエロス(愛)」だと指摘している。明治以降の近代日本が世界に与えたインパクトについては、色々な見方もあろうが、氏が指摘するように「ヒュージネス(巨大なもの)」と戦うパッション(精神)が、結果として人種平等や植民地の解放をもたらした側面も否定できない。

 数学者、岡潔氏は晩年日本の教育に警鐘を鳴らし、時の文部大臣への提言書で「明治以降の教育は知(論理力)の面での教育は良かったが、情・意の教育は明治以前の方が良かった」という趣旨を述べ、「小我」ではない「真我」の育成が重要であると指摘した。人は自を他と区別してエゴにむかう小我を持っているが、同時に他を大切にする真我(大我)が重要で、後者を育てるのは「情」の力だという。災害時に自分を後にし他を先にする利他の精神、おもてなしのこころ、サムライ精神などと最近注目されている日本のこころの一側面にこそ、これからの人類社会に大きく貢献できる要素がある。

 ◆人類共通の先人の知恵

 個人的には、若い頃から禅道場で坐禅を続け、印度哲学・東洋哲学が日本に伝わり、独自の神道文化と融合し、長い歴史の中で素晴らしい日本の「ころの文化」として結実してきたことを体験を通じ実感している。剣道、合気道など数多の武道や茶道、書道など「道」のつく日本の生活文化は、ほとんどが禅や神道など、日本のこころの文化を、その奥義で継承し続けている。実は東洋哲学も、紀元前の東西文化交流を経て、ギリシャ、イスラムの哲学と底流では繋がっており、日本のこころの文化にも、人類共通の先人の知恵としての普遍性が認められる。

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