日産自動車がカルロス・ゴーン容疑者の会長解任に動く一方、フランスの自動車大手ルノーは、仏政府が前面に立ってゴーン会長の留任を決めた。ルノー経営は政府主導に傾き、企業連合を組む日産との企業文化の溝が深まりそうだ。
ルノーがゴーン氏の逮捕を受けて発足させた暫定経営陣は21日、記者会見で初めて姿を現した。だが、会見の主役は冒頭からルメール仏経済・財務相だった。ルノーの「暫定トップ」になったティエリー・ボロレ氏らを前に、「強固な経営体制ができた」と胸を張った。ボロレ氏の発言は6分間の会見で最後のわずか40秒間。日産との連合は「死活的に重要」と訴えるにとどまった。
ルメール氏は「われわれは法治国家であり、推定無罪が原則。ゴーン氏に対する容疑は現段階では何も立証されていない」と発言。同氏のルノー会長解任を否定したうえで、日産が内部調査で集めたゴーン氏の不正情報をルノー側に渡さないことへの不満をあらわにした。
19日の逮捕劇の後、ルノーは21日の会見までに3つの短い声明を出しただけで、経営陣はほとんど沈黙を保ってきた。一方で、ルメール氏はメディアや記者会見で毎日発言し、ルノー、日産の企業連合の重要性を訴えた。「電気自動車(EV)、自動運転車の開発には強いメーカーがいる」と述べ、フランスの競争力強化のため日産を必要としていることを露呈した。仏政府はルノー株の15%を保有する筆頭株主だ。