日本は為替条項を懸念 金融政策縛られる懸念

 政府・日本銀行は新たな貿易協定に不当な通貨安誘導を禁じる為替条項が盛り込まれることを懸念している。急激な円高が起きた際に円を売ってドルを買う為替介入や、日銀の追加緩和による景気下支えの障害になる恐れがあり、金融政策の手足を縛られかねない。条項が盛り込まれただけでも米国が貿易赤字を理由に通貨切り上げを求める局面が想起され、円相場に上昇圧力がかかる可能性がある。

 米国が為替条項の導入を主張するのは、ドル高が輸出の障害となり、通商交渉で日本に関税削減を認めさせても効果が薄れると懸念するからだ。11月30日に署名した新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」にも「為替介入を含む競争的な通貨切り下げを自制する」と明記した。

 一方、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が来年にも利上げをやめるとの観測がある。利上げ継続中は長期金利を0%に誘導する日本との金利差拡大が意識され、円が売られてドルが買われたが、利上げが止まればこの流れが弱まり日本の景気を下支えした円安基調が緩む恐れがある。

 為替が急激な円高に振れた際に機動的に対応するため、政府は対米交渉で為替条項を受け入れ難い立場だ。日本は平成23年11月の円売りドル買いを最後に為替介入をしておらず、日銀も「大規模な金融緩和策は2%の物価安定目標を実現するためのもので、為替操作が目的ではない」と主張。不当な通貨安誘導の懸念はないと抵抗している。

(田辺裕晶)