ネット防御、専門家を育成 ASEANの取引先警戒 日本が支援

 日本企業の東南アジア諸国連合(ASEAN)への進出が進む中、サイバー攻撃に無防備な現地の取引先などを通じ、日本にも被害が及ぶ懸念が生じている。加盟国の能力底上げのため、日本政府が支援し、セキュリティーの専門家を育成する研修所が9月、タイの首都バンコクに開所した。

 研修所は「日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター」。ASEAN各国の政府機関や、発電所などのインフラ企業に勤める人を対象に、今年から4年間で約650人に研修や、実践的な演習を行う。

 コンピューターウイルスを埋め込んだ「標的型メール」が送付され、データが盗まれた-。ある日の研修ではインドネシアやラオスなどから参加した21人が3、4人のグループごとに、どのデータが盗まれたのかを通信履歴から探っていた。日本人講師がアドバイスすると、真剣な表情でメモを取っていた。

 総務省によると、ASEANでは国によって対処能力に差があり、シンガポールは進んでいる一方、フィリピンやベトナム、カンボジアなどは課題があるとされる。日本は約10年前からASEANと意識啓発などの協力を続けてきた。

 タイはデジタル産業の育成に向けた方針を掲げ、サイバーセキュリティー政策にも積極的で、研修所の設置に名乗りを上げた。ピチェート・デジタル経済社会相は開所式で、研修所が「日本とASEANの協力をさらに推し進める」と期待した。

 開所式に出席した総務省サイバーセキュリティ統括官室の近藤玲子参事官は「日本企業のビジネスパートナーのコンピューター環境によっては、ウイルスをもらい、情報漏洩(ろうえい)を引き起こす可能性もある」と指摘。一般の人々が「感染に気付かないことも多い」と話した。

 研修に参加したマレーシアの政府系団体に勤める女性職員、アフィカさんは「サイバー攻撃はマレーシアでも増えており、どう対処すべきか勉強になった。攻撃を意識することの重要性を人々に伝えたい」と意気込みを語った。(バンコク 共同)