自衛隊、中国を見据え東南アと防衛協力強化 常駐の駐在官増員や装備品供与

フィリピンの海軍基地に到着した海上自衛隊のTC90練習機=2018年3月、マニラ近郊(共同)
フィリピンの海軍基地に到着した海上自衛隊のTC90練習機=2018年3月、マニラ近郊(共同)【拡大】

 日本が東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との防衛協力を強化している。南シナ海に進出する中国を見据え、自衛隊の中古防衛装備品を無償供与し、防衛駐在官も増員させた。ただ、経済力で揺さぶりをかける中国にASEAN各国が歩調を合わせれば日本の取り組みは、はしごを外される形になりかねない。

初の練習機引き渡し

 「既存の海軍機に比べて哨戒範囲が2倍になる」。昨年3月にフィリピンの首都マニラ近郊の海軍基地で行われた海上自衛隊のTC90練習機3機のフィリピン海軍への引き渡し式典で、ロレンザーナ国防相は海上警備能力の向上を歓迎した。

 日本では2017年5月、自衛隊が保有する中古の防衛装備品を他国に無償や安価で譲渡できるようにする改正自衛隊法が成立。今回の引き渡しは初の適用例となった。

 フィリピンとは陸上自衛隊のUH1多用途ヘリコプター部品を無償提供することでも合意しており、フィリピン軍報道官は「中古とはいえ、質の高い日本の装備品をただでもらえるのは大変ありがたい」と語った。

 日本は昨年4月にマレーシアとも防衛装備品・技術移転協定を結んだ。インドネシアとも交渉中で、ベトナムとの締結も視野に入れる。

 昨年3月には中国と南シナ海での領有権を争うフィリピン、ベトナムに常駐する防衛駐在官を各1人から各2人に増員した。今年度中にマレーシアも2人に増やす。各国国防省や軍関係者との交流を活発にし、情報収集能力を強化して中国の動向を注視する狙いがある。

「法の支配」正念場

 一方の中国は経済支援を武器にASEANの取り込みを着々と進める。ASEAN側にとって、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」によるインフラ開発は魅力的で、中国との間に波風を立てたくないとの意向もある。中国はそれを承知の上で巧みに攻勢を掛けている。

 対中最強硬派だったフィリピンは、ドゥテルテ大統領が16年10月に訪中し、巨額の経済協力を取り付けてから態度が急激に軟化した。フィリピンが議長国を務めた17年11月のASEAN首脳会議の議長声明から南シナ海問題に対する「懸念」の文言が消えたことが象徴的だ。

 中国とASEANは初の共同海洋演習として、18年8月にシンガポールで机上演習、10月には中国広東省沖で実動演習を行った。「協調関係」を対外的にアピールしつつ、南シナ海での紛争回避に向けた「行動規範」を策定中だが、枠組み段階では肝心の法的拘束力に触れておらず、中国優位の内容だ。「法の支配」を主張する日本はどう対処するのか、正念場となっている。(マニラ 共同)