高論卓説

変温経済と地域金融の不安 地方衰退で再編の風吹き荒れるか

 「2018年を総括すると、『適温経済から変温経済への転換の節目』だったという印象を持っている」。全銀協の藤原弘治会長は、昨年12月13日の記者会見でこう述べた。また、日本企業の約6割が実質無借金となる中、00年前半に問題視された雇用・設備・債務の“3つの過剰”が“3つの不足”にシフトした1年であったとも振り返っている。その一方で、米中の貿易摩擦、Brexit(ブレグジット、EU離脱)、欧米各国におけるポピュリズムの台頭など「グローバリズムの巻き戻し」とも言える動きに不安定さも増していると指摘していた。

 この藤原会長の不安は、年初の市場の乱調で早くも顕在化しつつある。2日には一時1ドル=104円台へ円高に振れ、4日大発会の東京株式市場では日経平均株価が一時700円以上も下落し、2万円を割り込んだ。実体経済の先行指数とされる株価下落は波乱の幕開けを告げているのだろうか。

 今年は改元が予定されている。既視感を覚えるのは前改元が行われた1989年の平成の始まりである。振り返ればこの時も大きな経済の転換点であった。バブル経済がピークに達したのは翌90年、それから日本経済は奈落の底へと落ち込んでいった。

 分岐点は東西冷戦の終結であり、グローバル経済の変容であったように思える。バブル経済に踊り「ゆでガエル」状態にあった日本は、その変化への対応で後手に回った。実体経済への負の影響は、最後は金融へのしわ寄せとなって顕在化していった。

 まず、ノンバンクである住宅金融専門会社(住専)が倒れ、次いで体力の弱い中小金融機関の経営破綻が相次ぎ、信用不安が全国に波及していった。不良債権の共同買取機構等が設立され、負の資産の解消を目指したが、資本の余力は乏しく、公的資金の注入も遅きに失した感は否めない。結果として、大手銀行が再編され、現在のメガバンクが誕生した。

 平成が終わろうとしている今、この30年前に今一度立ち返り、その後の日本経済への処方箋を再検証してみる価値はあろう。戦後最長の「いざなみ景気」超えが取り沙汰される現在が、当時と似ているように思えるのは老兵の思い込みであろうか。

 気になるのは中小企業への目配りである。中小企業金融については08年のリーマン・ショックを契機に中小企業金融円滑化法が成立し、経済の下支えに大きく寄与したことは記憶に新しい。その後、同法は13年3月末に期限を迎えたが、金融庁の金融検査マニュアルにその趣旨は残り、金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸し付け条件の変更などに努めていることは現在も変わりはない。

 しかし、その根幹にある金融検査マニュアルは廃止される予定になっており、中小企業金融円滑化法の趣旨もぼやけかねないと懸念されている。

 今年の金融の焦点は地域金融機関にあたる。人口減少と高齢化の影響は着実かつ速度を上げ地方経済をむしばみつつある。その負の影響は地域金融機関のバランスシートに行き着く。その限界点が近づいているように思えてならない。90年代に大手銀行に再編の嵐が吹き荒れたような光景が今年、地域金融機関に展開されるやもしれない。変温経済の芽は各所に散見される。

【プロフィル】森岡英樹

 もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。

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