【論風】逼迫するインフラ整備資金 先進国の更新需要、途上国圧迫 (1/2ページ)

 インフラの整備資金への需要には膨大なものがある。2年前にアジア開発銀行(ADB)が見直したアジア地域における需要額推計は、年間1.7兆ドル(約185兆円)というもので、その前に行われた推計額の2倍強になっている。世界的にインフラが進行してもいない中で、なぜ2倍に急伸したか疑問を持つ者も多いが、日本での公共事業をめぐる論争の中でも指摘された「熊や猪しか歩かない道路」までも取り込んだというよりは、デジタル面でのインフラなどの新規分野の算入や完成後の耐久性の向上策追加によるコスト増などを背景にしたものと考えられる。(国際通貨研究所理事長・渡辺博史)

年間4兆ドルが必要

 ADBが一つ前の推計を出したほぼ同じ時点で、経済協力開発機構(OECD)が全世界のインフラ資金需要推計を出しているが、それは10年で20兆ドル、年ベースにすると2兆ドルという数字であった。アジアと全世界の比率が大きく変わっていないとすれば、現在では毎年4兆ドルという資金需要が世界には存するということになる。

 果たして、これだけの需要に見合う資金供給があるかというと、これはかなり心もとない。短期的資金は、これまで先進国の中央銀行が大量に流動性を供給し続けた結果、米国の金融政策の方向転換があってもその歩みが遅いため、いまなお、かなりの資金が開発途上国市場も含めた資本市場に残存している。しかし、長期の資金供給には大きな伸びはない。一つの理由は、短期で調達した資金を長い貸し出しに転換する力を民間銀行が失ってきたことである。特に、欧州の銀行の低迷、衰退がかなりの影響を与えている。また、本来的に長期の資金を保有している年金基金などでは、母集団の高齢化の進行によって資金の支払いが開始し、さらに高利回りを狙ってファンドに長期資金を提供していたグループが相対的な利回りの低下により、その投資対象を長期のものから中期のものにシフトされていることが挙げられる。

進む老朽化