論風

逼迫するインフラ整備資金 先進国の更新需要、途上国圧迫 (2/2ページ)

進む老朽化

 それに加えて、深刻さを増す要因になっているのは、先進国からの資金需要の増大である。これまで、特に世紀の変わり目時点で着目されていたインフラ資金需要は、専ら開発途上国における新規需要であった。当時は、先進国は前世紀後半にかなり厚めのインフラ投資を行った結果、それがいわば飽和点に達していたことから、新規の資金需要は開発途上国からということに疑問が呈されることは多くなかった。

 しかし、昨年8月、イタリアのジェノバで高架橋が落ちたことが表象するように先進国で整備されてきたインフラの維持、補修、更新が大きな問題になってきた。07年8月に米ミネソタ州で高速道路の橋が崩落した時点では、米土木学会の調査報告は「21世紀初頭に米国に存在する約60万本の橋のうち、構造上の欠陥や老朽化が指摘されているものは、全体の27%以上ある」と述べている。翻って、わが国のケースを見ても、12年12月に笹子トンネルの天井板が落下している。このように、1960年代から80年代にかけて整備された先進国のインフラ施設が50年、60年と経年する中で、その維持、補修、更新が必至となっている。

 また、ニューヨーク・マンハッタン島を大陸とつなぐ多くの橋も、建造後かなりの期間が経過し、その維持に多大な関心が払われる状況になっている。映画その他で有名なブルックリン橋は、1883年に当時の基準強度の6倍の強さで建造されたとされているが、既に130年超経過している。

 そういう状況下では、長期の資金は、リスクの少ないと思われる先進国の既存の事業に流れやすく、開発途上国における新規事業への資金供給は先細りしかねない。いわば、インフラ資金をめぐる綱引き状態が発生している。開発途上国の事業の利回りが昔ほど高いものが期待できない状況では、そのような傾向はさらに強まっていく懸念がある。

【プロフィル】渡辺博史

 わたなべ・ひろし 東大法卒、1972年大蔵省(現財務省)入省。75年米ブラウン大学経済学修士。理財局、主税局、国際局を歴任し2007年財務官で退任。一橋大学大学院教授などを経て13年12月から16年6月まで国際協力銀行総裁。同年10月から現職。69歳。東京都出身。

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