東日本大震災を通じて見えたSNSの有用性と行政の課題 福岡市、高島宗一郎市長の挑戦 (4/4ページ)

 東日本大震災での経験を生かした熊本地震

 逆境に負けず改革を進めていった結果もあり、16年4月に起きた熊本地震では東日本大震災で学んだことを生かせたという。特に円滑な物資の供給を実現できたことは大きな成果だった。

 これまで支援物資の管理は紙や電話で行うことがほとんどだった。そのため物資の供給情報をリアルタイムで共有できず物資が1カ所に集中してしまい、貴重な物資を廃棄するケースもあったという。東日本大震災時に福岡市でもこのような残念なことが起こっていた。

 だが、そんな経験があったからこそ熊本地震の時には迅速に対応できたという。福岡市は包括連携協定を締結しているNTTと連携し、震災直後に「避難所運営支援システム」をわずか1週間半程度で開発。このプラットフォームを活用することで避難所や自治体、物資集積拠点にある物資の情報をリアルタイムで共有することが可能になった。

 その結果、福岡市が支援を担当した30カ所以上の避難所では過剰な物資供給や物資不足といった供給の偏りを解消できたのだ。「最初は風当たりが強かったですが、こうした実績を少しずつ積み重ねていくことで、私の取り組みも徐々に認められるようになった気がします」と語った。

 また、福岡市の職員が熊本地震の際に、迅速に対応できたのは普段から新しいツールやサービスを活用していたからだ、と高島市長は分析。「平時の際に利用できないものは有事の際にも利用できない」。常日頃から何が行政のためになるのか意識することが大事だという。

 福岡市が目指すのは

 アジアのリーダー都市を目指す。

福岡市の高島宗一郎市長(撮影/北嶋幸作)

福岡市の高島宗一郎市長(撮影/北嶋幸作)

 これが福岡市の掲げる目標だ。人口や経済規模の拡大だけではなく、過大な行政コストの削減や生産性の向上を図り、持続可能な街づくりを行っていく。スタートアップ企業の誘致や医療分野の充実など、福岡市が既に取り組んでいるプロジェクトにもSNSやITなどの活用はかかせない。

 高島市長が行政にテクノロジーを取り入れることに注力するのは、このような目標があるからだ。今後は垣根を超えた民間企業との連携モデルを構築し、日本や世界に先駆けて社会が抱える課題に挑戦していくロールモデルとしての地位確立を目指していくという。

 「市長就任前にプライベートで香港と上海に行く機会がありました。そこでWi-Fi環境が日本より整っていることに衝撃を受けたのです。それまでの私はインターネット分野においても日本は先進的だと思い込んでいたので。日本は世界に既に遅れを取っています。だから巻き返していく勢いで改革を進めていく。グローバル規模で活躍できる福岡市にしていきたい」と意気込んだ。