カンボジア中銀予測 EU関税に懸念 縫製が牽引、今年も7%高成長

建築ブームが続く首都プノンペン。空き地や埋め立て地に集合住宅や商業ビルが次々と建設されている(木村文撮影)
建築ブームが続く首都プノンペン。空き地や埋め立て地に集合住宅や商業ビルが次々と建設されている(木村文撮影)【拡大】

  • カンボジアのフン・セン首相(AP)

 カンボジア中央銀行は、2019年の同国の経済成長率が7%になるとの予測を発表した。18年の経済成長予測7.3%を下回るものの、引き続き高い成長率を保つ見込みだ。一方で、欧州連合(EU)の縫製品などへの特恵関税(EBA)停止問題など、経済発展を妨げるリスクも指摘している。

 ◆2.6%インフレ安定

 カンボジアの経済成長率については、世界銀行など国際機関も7%前後を予測しており、今回のカンボジア政府による成長予測と一致している。中銀によると、19年のインフレ率は2.6%と安定した数値で推移し、外貨準備高は113億ドル(約1兆2300億円)に上るとみている。

 これを受けてオーン・ポーンモニロット経済財務相は、カンボジアの経済成長の主な要因として、建築、縫製、農業、観光の各セクターの順調な成長と、国内消費の伸びを挙げた。ポーンモニロット経済財務相によれば、カンボジアは世界147カ国・地域に輸出、135カ国・地域から輸入をしており、貿易額は国内総生産(GDP)の約6割を占める。18年の輸出総額は、前年比18%増の130億ドルに達するとしている。

 中銀の最新統計によると、輸出品の52.1%は縫製品で、続いて靴が5.5%に当たり、カンボジアの経済が引き続き縫製・製靴産業に牽引(けんいん)されていることが分かる。カンボジアの経済成長を支える外国直接投資も、18年には前年比で12%増となっており、その多くが縫製、銀行、不動産に集中しているという。

 中銀は、成長を妨げる可能性がある外的なリスクとして、EUが検討している特恵関税の撤廃、「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」の発効による影響を挙げている。

 ◆建築ブームに警鐘

 EUは、18年7月に実施されたカンボジア総選挙をめぐり、現政権による野党勢力や人権運動家への弾圧を問題視した。EU側はカンボジアに調査団を派遣、「状況が改善されなければ撤廃」として、実際に撤廃手続きに入ったとの報道もある。これに対しカンボジア側は「特恵関税はいずれ撤廃されるものであり、国内経済に大きな影響を与えない」と強気の姿勢を示してきたが、今回の中銀の指摘にもある通り、撤廃されれば国際競争力の低下は否めない。縫製業が輸出額の半分余りを占めている現実からも影響は必至だ。

 18年7月の総選挙で下院議会の全議席を独占した与党・カンボジア人民党とそれを率いるフン・セン首相は、解党した最大野党・カンボジア救国党に対して、現在も何ら姿勢を変えていない。国際的に強い批判を受けた野党勢力の弾圧や人民党の一党独裁体制だが、国内情勢は安定しており、経済活動にも影響は小さかった。フン・セン政権は国内統治に自信を深めており、国際関係の修復に着手する余裕もみられる。

 国外に滞在中の前党首サム・レンシー氏、国内で逮捕・拘束されたままのケム・ソカー党首への対応が、EUとの駆け引きの切り札になるだろう。

 また、中銀は国内の経済成長抑制要因として、建築ブームに警鐘を鳴らしている。プノンペン都心部を中心として、カンボジア国内の建築ブームは長く続いている。中銀によれば、建設分野の借入額は19年末までに前年比で3割強伸びる見込みだという。そのほか、近隣諸国に比べて高い電力コスト、縫製工場労働者の最低賃金の上昇などが投資を抑制し、カンボジアの競争力を低下させる恐れがあるとしている。(カンボジア月刊邦字情報誌「プノン」編集長 木村文)