住宅難パキスタン無策 500万戸計画 財政・金融脆弱で具体化至難

再開発が喫緊の課題になっているカラチの市街地(ブルームバーグ)
再開発が喫緊の課題になっているカラチの市街地(ブルームバーグ)【拡大】

 南アジアのパキスタンで、1000万戸に上る住宅不足に対応するため、カーン首相が5年間で500万戸の低コスト住宅の建設を宣言した。人口密集に加え、社会の混沌(こんとん)と宗派間や民族間の抗争を解消するには都市再開発が急務だ。ただ、財政、金融両面でその道のりは困難を極める。

開発業者に恩恵なし

 パキスタンは立て続けに財政危機に見舞われ、1980年代以降、IMF(国際通貨基金)と13回に及ぶ救済交渉を重ねてきた。「首相の看板政策である住宅プロジェクトは年間170億ドル(約1兆8770億円)以上が必要」とカラチを拠点とする不動産業界の重鎮、アリフ・ハビブ氏は試算する。しかし、現時点で政府に首相の宣言内容の具体策はほとんどない。

 ハビブ氏のような不動産開発業者も、低コスト住宅建設から得られる限られた収益では請負に応じないとみられ、住宅プロジェクトには政府が助成金を出し、開発業者を支援することが避けられない。しかし財政が逼迫(ひっぱく)する政府が資金を確保するのは困難だ。

 さらに、パキスタンの銀行に住宅向け融資に十分な資金があるか不明でもある。国債への投資が資金源の大半であるうえ、2018年7~9月期中に融資の焦げ付きは2%増加し6370億パキスタンルピー(約5030億円)に膨らんだ。

 都市研究センターのモハメド・ユヌス所長は「債務不履行のリスクが非常に高いことが銀行にとっての課題。特に低所得者層の住宅ローンが最終的に返却されない事例はアジアでは非常によくある」と話す。

 地元証券トップライン・セキュリティーズのチーフエコノミスト、サード・ハーシェミ氏は、債務不履行が生じた際に金融機関が不動産を差し押さえられるようにするために、政府は規制上の障害に取り組む必要があると話す。また、カラチのユナイテッド銀行のシマ・カミル最高経営責任者(CEO)は「住宅担保金融はまだサービスが行き届いておらず、パキスタンの全銀行が経済成長には欠かせない分野として関心を持っている。カーン首相はより多くの人が利用できる環境づくりをする必要がある」と指摘する。同国の20年間の住宅担保金融の利率は現在13.7%から14.7%。

土地使用80%が違法

 一方、人口1500万人の半数以上がスラムに暮らすカラチの都市再開発は喫緊の課題だ。インドと分離独立した1947年に大規模な移民の流入があり、アフガン戦争の影響も加わり、カラチでは民族同士の衝突やギャング抗争が絶えない。

 カーン政権と連立関係にある統一民族運動(MQM)に所属するカラチ市長、ワシーム・アクタル氏は、都市計画と行政規則の不備や犯罪でカラチの80%以上の土地が違法に使用されているとし、長く市民に利用されてきた店舗などの違法建造物を解体してきた。その結果、市民の怒りを買っている。

 昨年末にはMQMの国会議員、アリ・ラザー・アビディ氏が殺害されるという事態にも至った。(ブルームバーグ Ismail Dilawar)