【シリーズ エネルギーを考える】大きな視点で物事をとらえるべき (1/3ページ)


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 □双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦さん

 米中貿易戦争が激化し、日本の経済や安全保障政策への影響が懸念されている。経済・安全保障で重要な役割を果たすエネルギーの問題について、米国ウオッチャーとして国際情勢に詳しい双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦さんに聞いた。(聞き手・神卓己)

 ■米中対立は長期化する

 -米中貿易戦争の行方に世界の関心が高まっています。米国ウオッチャーとしてどう見ていますか

 「トランプ大統領の言動は、相変わらず振幅が激しく、中国たたきの『タフガイ』と見られたいのか、それとも『ディールメーカー』を目指しているのか、よく分かりません。ただ、昨今の米中対立については、トランプさんの個人プレーと見るべきではないでしょう。米国の本音は、2018年10月4日にペンス副大統領がハドソン研究所で行った『対中政策演説』にまとめられています。経済・通商から安全保障問題、さらには自国民への監視、宗教弾圧、借金漬け外交など幅広い観点から中国を強烈に非難した演説です」

 「年末から年始にかけても、双方に大きな動きがありました。米国は12月31日に、トランプ大統領が署名して『アジア再保証推進法(ARIA法)』を成立させました。その内容は中国の影響力拡大に対抗すべく、米国がインド太平洋地域への関与を強め、日本や豪州など同盟国との関係を強化し、各国の防衛力整備を支援すべしというものです。上院は全会一致、下院も大多数が賛成するなど米議会が超党派で通した法律で、それだけ対中警戒感が強まっている表れであり、対台湾政策では台湾への武器売却なども盛り込んでいます。いずれも議会がトランプ大統領に注文をつける内容となっており、大統領の『スタンドプレー』にくぎを刺しているわけです。一方、中国では習近平国家主席が1月2日、台湾に向けた演説を行い、『1国2制度』の具体化に向けた政治対話を迫り、外部勢力の干渉や台湾独立分子に対しては、『武力行使を決して放棄しない』と述べました。米国のARIA法成立に反発した面もあったかもしれませんが、これまでの対台湾政策から大きく踏み込む内容となりました」

 -台湾問題が間に入りますと、米中関係はより複雑化しますね

 「台湾総統府はARIA法に対し、心からの歓迎と感謝の意を表明しました。逆に習演説に対しては蔡英文総統が『絶対に受け入れられない』との談話を発表、昨年11月の総選挙で大敗を喫した蔡総統が復活しつつあります。米中の間に台湾が挟まることになりますと、20年1月の台湾総統選に向けて、米中がともに台湾への影響力を行使しあうようになりそうです。安全保障面での米中対決となれば、通商問題の枠を超え、覇権争いの色彩を濃くすることになります」

 -米中の対立は長期化するということですか

 「長期化すると思います。貿易に関する対立であれば、妥協点を見いだすことはそうむずかしいことではありません。過去の通商交渉はまさに妥協の歴史を積み重ねてきました。しかし、今の米中間は、台湾、南シナ海、ファーウェイ制裁などいくつもの安全保障に関わる問題を抱えています。『米中新冷戦』ともいえる状況であり、この冷戦は長引くと見ています」

変わらない地理的課題