専欄

ホーチミンの「中国」 中国系の人たちとベトナムの人たちとの関係は

 今日5日は旧正月。中国では春節、ベトナムではテトと言う。1月下旬、テトの準備が進み、次第ににぎやか、華やかになるホーチミン(旧サイゴン)をほぼ30年ぶりに訪れた。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 庶民の交通手段は大きく変わり、路上はバイクであふれている。道路を横切るのが怖いくらいだ。1980年代後半にこの都市をしばしば訪れた際、シクロ(ベトナム式人力車)をよく利用したが、ほとんど見られなくなってしまった。

 もっとも、あの当時の定宿だった、サイゴン川そばのマジェスティックホテルに今度も泊まり、ホテル横の繁華街、ドンコイ通りを歩くと、当時とあまり変わらぬ光景も目にすることができる。

 歩道に置いた折り畳み椅子に寝そべってたばこを売るおばさん、歩道に座り込んでガムを売るおばさん、それに自転車でちまきを売るノンラー(ベトナムのすげがさ)姿の女性も。

 市中心部に中国領事館があり、入り口ゲート脇に設置された大きなスクリーンには、中国とベトナムの指導者が握手をしている写真、「ベトナムと中国の友誼は永遠に変わらない」という故ホー・チ・ミンの言葉などが繰り返し現れ、両国の友好関係を訴えている。

 ホー・チ・ミンは、中国で言えば、毛沢東的な存在。亡くなったのはちょうど半世紀前の69年だが、市庁舎前の広場には大きな立像があり、ホテル近くの書店の政治コーナーには、伝記をはじめ彼に関する本がずらりと並んでいる。

 中国系の人たちが多数住んでいる市西部のチョロン地区最大のビンタイ市場では、中国から輸入された食品や台所用品なども目立つ。ベトナムにとって中国は、最大の貿易パートナーである。

 このチャイナタウンにある中国寺院のそばで、「私は広東人」と言うおばさんに出会った。寺院近くで小さな商売をしているという。私でも聞き取れる北京語で話してくれたので、中国系の人たちとベトナムの人たちとの関係について尋ねてみた。

 「口和心不和」という答えが返ってきた。「表面的にはうまくつきあっているが、本当に仲がよいわけではない」という意味だろう。中国とベトナム、国と国の関係が微妙なように、庶民と庶民の関係も微妙なようだ。

 隣国、隣人は互いに理解し合い、信頼すべきだと思うが、それがなかなか難しいのが現実だ。(敬称略)

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