【山本隆三の快刀乱麻】水素で燃料輸出維持図る豪州 日本は輸出国との連携を (1/4ページ)

豪州南東部ニューサウスウェールズ州にある石炭輸出港のニューキャッスル港(ブルームバーグ)
豪州南東部ニューサウスウェールズ州にある石炭輸出港のニューキャッスル港(ブルームバーグ)【拡大】

  • フューエルセル・エナジーの製造施設=米コネティカット州(ブルームバーグ)
  • レスター・ブラウン氏

 10年以上前のことだが、米国の環境活動家、レスター・ブラウン氏の講演を聞いたことがある。ブラウン氏は講演で、米アリゾナ州の砂漠地帯に太陽光、風力発電設備を設置すれば、再生可能エネルギーで米国の電力需要を賄うことができるという趣旨の話をされた。あまりにバラ色の説明に疑問を持ち、質疑応答の際、「安定的な電力供給をどのように行うのか。それだけの再生エネを受け入れる十分な能力が送電網にあるのか」と質問した。レスター氏は「再生エネの発電量が余った場合は、水を電気分解し水素に変えておけばよい。水素の形で輸送すれば、送電線は不要」と回答した。

 この講演があった2000年代、米エネルギー省(DOE)が水素製造や燃料電池の技術開発などに力を入れ、最盛期を迎えていた。予算額は毎年伸び続け、08年度には水素・燃料電池関連予算が2億7200万ドル(約300億円)に達した。しかし、この年をピークに予算額は減少し続け、19年度の予算要求では前年度比43%減の5800万ドル(約64億円)まで落ち込んでいる。

 DOEの予算が減額される理由の一つは、水素の大きな需要をつくる燃料電池車(FCV)に対する米国市場の評価によるものだろう。例えば、電気自動車(EV)メーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はFCVをまったく評価しない。FCVの効率は水素の製造工程を考えると、EVの3分の1程度。燃料の水素を充填(じゅうてん)できる場所が限られるというデメリットがある。唯一の利点は充填時間が短いことだが、これもEVの電池性能の向上により大きなメリットではなくなるとの見方もある。

 EVメーカートップの発言なので多少割り引く必要はあるが、米国市場ではFCVを冷めた目で見ているようだ。

 米ナスダック市場に上場しているベンチャー、フューエルセル・エナジーの株価は、2000年9月に577ドルを超えたが、10年後の10年9月には14.76ドルまで下落し、現在の株価はピーク時の1000分の1以下の50セントほどにすぎない。同じナスダック市場に上場しているテスラの株価は295ドル(昨年12月24日)。投資家の期待の違いが表れている。

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