「気配り設計」でアジア強化 パナソニックホームズ、台湾での実績てこに

日本的な住宅を紹介するパナソニックホームズのモデルルーム=2018年12月、台湾・新北市(共同)
日本的な住宅を紹介するパナソニックホームズのモデルルーム=2018年12月、台湾・新北市(共同)【拡大】

 日本の住宅文化はアジアに受け入れられるか-。住宅大手パナソニックホームズ(大阪府豊中市)は、台湾を拠点にして、日本の住宅の特徴とも言える“気配り設計”を武器に東南アジアで売り込んでいる。

 人口減少に伴い日本で新設住宅着工戸数が伸び悩む中、住宅メーカーの海外進出は本格化している。ただ、企業買収や合弁事業などで現地化を図るケースが多く、日本式ものづくりにこだわるメーカーは少ない。

 台湾では「パナソニック」の名称は知名度が高くブランド力もある。半世紀にわたる日本統治時代を経験している台湾人は日本文化への親近感があり、近年の日本旅行ブームもあって生活スタイルも近づいている。

 2010年に台湾に進出したパナソニックホームズは内装を手始めに徐々に事業を拡大、18年には三井不動産とともに台北市と隣接する新北市で初めて高層分譲住宅を手掛けた。

 台湾には(1)住宅価格の高騰(2)深刻な大気汚染(3)少子高齢化の加速-といった事情があるが「狭い空間を効率的に利用した日本的な設計、日本での高齢者向け住宅の知識や経験などが生かせる」とみている。

 ただ、住まいは各国の文化や習慣と直結する商品だけに、日本の技術がそのまま通用しないのが難しいところ。台湾では浴室はタイル貼りが主流で、ユニットバスは安っぽいと受け止められる。

 台湾の生活スタイルに配慮しつつ、バリアフリー化や防音対策などに適した「二重床」など日本の住まいの利点をアピールする宿泊型のモデルルームを設け、消費者の意識変化を促してきた。

 キッチンでは豪華でデザイン性の高い欧州メーカーよりも、収納が多く機能性の高い日本式システムキッチンの良さが理解され始めた。

 パナソニックホームズの17年度売上高3574億円のうち海外事業は約100億円とまだ少ないが、インドネシアやマレーシアでも住宅事業を展開している。田中一彦執行役員は「欧米よりもアジアにこそ日本式の生活スタイルが受け入れられる可能性がある」と、タイやベトナムなど東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への事業拡大を目指している。(台北 共同)